“納得できない現状”のジャパンディスプレイ、イノベーションで未来は拓けるか:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
ジャパンディスプレイが事業戦略発表会「JDI Future Trip〜First 100 Days〜」を開催。同社 常務執行役員 CMOの伊藤嘉明氏は、同氏が中心になり、社内公募によって2018年4月に発足させたマーケティング・イノベーションを推進する組織体による約100日間の成果を紹介するなど、イノベーションにより厳しい現状を打開する方針を打ち出した。
スマートヘルメットなどでB2Cビジネスに参入
厳しい業績を問われることが多いJDIだが、ウェアラブル端末、車載、HUD(ヘッドアップディスプレイ)などさまざまな市場でシェアトップを握っている。「最終製品ビジネスへの参入」、つまりディスプレイパネルメーカーとしてB2Bビジネスのみを手掛けてきた同社がB2Cビジネスに参入するための足掛かりになるのは、これらの市場で評価されている強い技術になる。
B2Cビジネスに参入に向けて開発を進めている製品は3つある。ヘルメットにHUDを組み込むことで、視線を移動せずにさまざまな情報を見られるようにするスマートヘルメット。数秒遅れの映像の表示により後姿を確認できる機能などを持つおくれ鏡。好きなキャラクターやアイドルの立体映像をいつでも楽しめる“2.5Dバーチャル映像”となる、NHKメディアテクノロジーと共同開発したライトフィールドディスプレイ※)を搭載するデバイスだ。これら3つの製品は、2019年度内の発売を目標に開発を進めている。
※)関連記事:次世代3Dディスプレイ「ライトフィールド」は飛び出さない、中にモノがある
従来通りのB2B事業としては、ウェアラブル端末向けに有力な製品として低消費電力反射型ディスプレイをアピール。B2B2Cのカテゴリーからは、おくれ鏡を組み込んだ神谷コーポレーション湘南の室内ドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」も披露した。
最後に紹介したのは、フォーミュラカーレース「スーパーフォーミュラ」の参戦チームである「DANDELION RACING」と共同で進めている、透過率80%の透明液晶ディスプレイを用いた実走実験だ。ヘルメットのシールドに透明液晶ディスプレイを重ねて装着し、走行中に確認が必要な情報を表示することで視線移動を減らし、ドライバーが運転に集中できるようにする。
伊藤氏は「イノベーションを推し進める上で重要なのは“できるできない”ではなく“やるかやらないか”だ。そして、われわれはやる」と強調。そして、次回のJDI Future Tripを2018年12月に行うことを予告している。
組織発足から100日の成果ということで、B2Cビジネス参入製品はまだ詳細が固まっていない。スマートヘルメットに求められる安全性の認証や、B2B分野のみを手掛けてきたJDIがどのような商流で一般顧客に販売していくかなど、解決すべき課題は多数ある。新たな理念とする「見聞き、触れ合え、香り、味わえる」についても、その真価を表すような製品があったとはいえない。次回のJDI Future Tripを行う2018年12月までに、イノベーションを推し進める上でのより具体的な形を示せるかが問われることになるだろう。
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