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次世代3Dディスプレイ「ライトフィールド」は飛び出さない、中にモノがある組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

NHKメディアテクノロジーとジャパンディスプレイは、裸眼で3D映像が見られる技術「ライトフィールドディスプレイ」について説明した。専用の3Dメガネを用いる視差方式がディスプレイから物体が飛び出してくるのに対し、ライトフィールドディスプレイはディスプレイの中に物体が存在しているかのように見える点が最も大きな違いになる。

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 NHKメディアテクノロジー(NHK-MT)とジャパンディスプレイ(JDI)は2017年7月12日、東京都内で会見を開き、両社で共同開発を進めている、裸眼で3D映像が見られる技術「ライトフィールドディスプレイ」について説明した。

 3D映像技術としては、専用の3Dメガネを用いる視差方式が広く知られている。2009年に公開された「アバター」をはじめとする映画や、同時期に発売された3Dテレビなどに採用されていた。また、同じ視差方式で、レンチキュラーレンズなどを用いたディスプレイにより裸眼かつ複数人数で3D映像を見られる技術もある。ただし、解像度が低下するという課題があった。

立体視ディスプレイの分類
立体視ディスプレイの分類。従来の視差方式に対して、今回の開発成果ではライトフィールド方式を採用している(クリックで拡大) 出典:NHK-MT、JDI
視差方式ライトフィールド方式 視差方式は左右の目の位置に視差画像を集める(左)。ライトフィールド方式は物体の放つ光線を再現する(右)(クリックで拡大) 出典:NHK-MT、JDI

 ライトフィールドディスプレイは、物体の放つ光線をディスプレイによって再現するライトフィールド方式を採用している。これにより、専用メガネを用いずに裸眼で3D映像を見ることができる。ただしそれ以上に、ディスプレイに対して物体が飛び出したり奥にあったりするように見える視差方式に対して、ライトフィールド方式はディスプレイの中に物体が存在しているかのように見える点が最も大きな違いになる。

 NHK-MTとJDIが2015年から共同で開発を進めてきたライトフィールドディスプレイは、JDI製の17インチ8K液晶ディスプレイ(画素密度は510ppi)を用いている。ライトフィールドディスプレイ向けの3Dコンテンツは、NHK-MTが撮影(実写の場合)もしくは作成(CGの場合)した。

 今回の開発品は、従来のライトフィールドディスプレイでは3D映像を見られる水平方向の視域角が20〜30度にとどまっていたところを130度までに広げたことが最大の成果となる。これによって、3D映像を同時に複数人数で見られるとともに、左から、正面から、右からなどと見る視点によって異なる3D映像を見られるようになる。

ライトフィールドディスプレイの表示の例
ライトフィールドディスプレイの表示の例。CGで作成した金魚の映像を正面から見た状態(クリックで拡大)
左から見た状態右から見た状態 ライトフィールドディスプレイのCGで作成した金魚の映像を左から見た状態(左)と右から見た状態(右)(クリックで拡大)
ライトフィールドディスプレイに表示された金魚の映像を各方向から撮影。左右方向は表示が変わるが、上下方向は変わらないのは「一般的に求められる視域角の横方向の広さを見せることに注力したため」(説明員)という(クリックで再生)
越中和紙だるま越中和紙だるま越中和紙だるま ライトフィールドディスプレイによる3つの越中和紙だるまの実写3D映像。左から見た状態(左)、正面から見た状態(中央)、右から見た状態(右)(クリックで拡大)
江戸木目込人形江戸木目込人形江戸木目込人形 ライトフィールドディスプレイによる江戸木目込人形の実写3D映像。左から見た状態(左)、正面から見た状態(中央)、右から見た状態(右)(クリックで拡大)
高岡銅器高岡銅器高岡銅器 ライトフィールドディスプレイによる高岡銅器の実写3D映像。左から見た状態(左)、正面から見た状態(中央)、右から見た状態(右)(クリックで拡大)
駿河竹千筋細工駿河竹千筋細工駿河竹千筋細工 ライトフィールドディスプレイによる駿河竹千筋細工の実写3D映像。左から見た状態(左)、正面から見た状態(中央)、右から見た状態(右)(クリックで拡大)
江戸切子江戸切子江戸切子 ライトフィールドディスプレイによる江戸切子の実写3D映像。左から見た状態(左)、正面から見た状態(中央)、右から見た状態(右)(クリックで拡大)

 2017年5月に米国で開催されたディスプレイ技術のイベント「SID DISPLAY WEEK 2017」で初公開し、来場者から多くの注目を集めた。「これまでにない高精細な次世代3D映像を実現できた」(NHK-MT 放送技術本部 映像部 副部長の大塚悌二朗氏)という。

 現時点で開発段階であり、実用化時期などは未定。大塚氏は、想定する用途として「視域角が広いので、多人数で見られる3Dサイネージや、美術工芸品の映像アーカイブ、教育分野などが考えられる。また立体を生かしたエンターテインメントについても検討したい」と述べている。

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