JDIは車載とスマホ以外で売上高1000億円、けん引役の1つは「指紋センサー」:組み込み開発ニュース
ジャパンディスプレイ(JDI)は、車載やスマートフォン以外の分野を担当するディスプレイソリューションズカンパニーの事業説明会を実施。併せて、新規ビジネスの1つである新開発の指紋センサーを披露した。
ジャパンディスプレイ(JDI)は2018年1月23日、東京都内で会見を開き、社内カンパニーの1つで、車載やスマートフォン以外の分野を担当するディスプレイソリューションズカンパニーの事業説明会を実施した。
同カンパニーは2020年度の売上高目標1000億円に向けて、ハイエンドデジタルカメラやウェアラブル機器向けなどの既存事業だけでなく、電子ペーパーやセンサー向けといった新規ビジネスも展開する計画だ。2018年は液晶ディスプレイのタッチ入力技術を応用した透明な指紋センサーの量産を予定している。
新規ビジネスは既存事業と同等の売り上げ規模まで発展させ、指紋センサーを含む6つの事業で目標の1000億円を達成する。
指紋の凹凸による静電容量の変化
事業説明会と同日に、静電容量方式ガラス指紋センサーを発表した。LTPS(低温ポリシリコン)液晶ディスプレイで実績のあるタッチ入力技術を応用して指紋を識別するセンサーだ。採用される製品については言及しなかったが、スマートフォン以外になるという。
コストは「シリコン基板を用いた指紋センサーより高いということはない。センサーのサイズ次第ではシリコンタイプより安価な場合もある」(JDI 執行役員 ディスプレイソリューションズカンパニー社長の湯田克久氏)。
従来のタッチパネルは、静電容量の変化が起きている部位を特定することで指が触れている位置を検出している。新開発のセンサーでは、この仕組みを基に指紋の凹凸による静電容量の変化を検知する。解像度は160×160、精細度は508ドット/インチ(dpi)。指紋を検知する感度はシリコン基板を用いる一般的なタイプと同等だとしている。
液晶ディスプレイのタッチ入力技術を応用しているため、ガラス基板上に静電容量式指紋センサーを形成することが可能になった。シリコン基板を用いるタイプや光学式など従来の指紋センサーの置き換えを狙うだけでなく、透明であることを生かしてバックライトやディスプレイとの組み合わせも提案していく。
今回発表したセンサーのサイズは8×8mmで指1本分の大きさだが、ガラス基板なので複数の指を同時に検知するようなサイズに拡大することも可能だという。また、フィルム基板に指紋センサーを形成することにより、曲面形状での指紋検出も実現する。
ガラス基板やフィルム基板の特徴を生かし、デザインや強度の制約から指紋センサーを搭載していない場所にも指紋センサーをつけることが強みになると湯田氏は説明。スマートフォンやPC以外にも、スマートカードなど個人認証が求められる製品に向けて広く提案していく。
生産はJDIの東浦工場(愛知県知多郡東浦町)で行う。JDIとしては小規模な生産拠点だが、投資を抑えながら迅速に製品化することが可能なため同工場を選んだ。
6つの事業で1000億円
ディスプレイソリューションズカンパニーが目標とする売上高1000億円は、6つの事業で達成する。1つ目はハイエンドデジカメ向けのディスプレイで、湯田氏は市場自体は成熟期を超えて衰退期にあると分析する。
2つ目は売り上げと利益が成長中のウェアラブル機器向け反射型液晶ディスプレイで、出荷台数も年間で1000万台規模に達しているという。ハイエンドデジカメとウェアラブル機器に向けたディスプレイが現在の同カンパニーの売り上げの主力だ。今後の成長を見込むのが、3つ目のVR(仮想現実)システム向けのヘッドマウントディスプレイと、4つ目のハイエンドノートPC向けディスプレイだ。
これら既存のディスプレイ事業に対し、2018年1月に相次いで発表しているのが新規ビジネスだ。静電容量方式ガラス指紋センサーや、店舗の商品棚に設置する電子ペーパーが5つ目と6つ目に該当する。
電子ペーパーは商品名や価格、値引きの情報などを掲載するもので、幅30cmで狭額縁のため棚の幅をフル活用した表示が可能だ。漢字の表記に適した198ピクセル/インチ(ppi)を発表済みで、さらに高精細な660ppiのタイプも開発を進めている。
現在の売上高について金額は開示しなかったが「(1000億円をゴールとすると)道半ば」(湯田氏)の状態だ。「現在の売り上げはハイエンドデジカメ向けが最も多く、ウェアラブル機器向けが2番手。3番目の売り上げは“その他大勢”」(湯田氏)という構成から、6つの事業を同規模に成長させて1000億円に積み上げる。
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