枝豆の売価が3倍になるピンポイント農薬散布技術、オプティムが農家に無償提供:スマートアグリ(2/2 ページ)
オプティムが東京都内で「スマート農業アライアンス」の成果発表会を開催。減農薬による付加価値で枝豆の売価が3倍になった「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を無償提供することで、農家にとってリスクのないスマート農業の普及に乗り出すことを明らかにした。
東アジアの有機食品市場は20兆円へ、日本が輸出大国に
オプティムがここまで踏み切るのは、国内における有機農業の将来性が極めて大きいからだ。現時点で、国内の有機農業(減農薬含む)の取り組み面積は、全耕地面積の0.5%にとどまっている。これは、売価アップを期待できるといっても、実際には有機農業が困難なことの証拠にもなっている。農林水産省は2018年度の目標として1.0%を掲げているが達成は容易ではない。「生産量が少ないこともあって、日本の有機食品購買金額は米国やドイツの10分の1程度。しかし、しっかり生産されれば購買額が伸び、国内だけで1兆円の市場が生まれる可能性がある。東アジアへの輸出市場を合わせれば市場規模は20兆円にもなる」(菅谷氏)。
今後は、2019年度にピンポイント農薬散布テクノロジーによる買い取りを全国規模に広げ、2020年度には「スマートやさい」の本格販売と海外輸出に踏み切りたい考え。菅谷氏は「IoT、AI、ロボットを使えば、今までばかばかしいほど手間がかかっていたことが容易にできるようになる。日本を東アジアへのスマートやさい輸出大国にしたい。ぜひ、スマート農業アライアンスに参加して“楽しく、かっこよく、稼げる農業”を始めてもらいたい」と述べている。
なお、成果発表会では、オプティムがコマツやNTTドコモ、SAPなどと展開している建設向けIoTプラットフォーム「LANDLOG」と同様に、農林水産、流通加工、食品産業向けIoTプラットフォームとなる「AGRI EARTH」を展開する方針を明らかにした。食品の生産から、流通/加工、販売/消費までをカバーしており、農業データ連携基盤協議会(WAGRI)とも連携している。
また、ピンポイント農薬散布テクノロジーを含めて、農業分野を中心に需要が高まっているドローンパイロットや整備士のシェアリングプラットフォーム「Drone Connect」も発表した。「ドローンパイロット版Uberのようなサービスだ。ドローンを扱える農業生産者もDrone Connectに登録すれば、その分の収益を得られる」(菅谷氏)という。2018年8月1日からβ版をリリースし、2020年度に1万パイロットの登録、年間10万マッチングを目指すとしている。
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