日本精機から防爆スマート工場ソリューション、車載部品生産のノウハウ生かす:プラントメンテナンスショー
日本精機は「第42回 プラントメンテナンスショー」において、クラウド型遠隔監視システム「SMASH」を披露した。既に2017年秋に発売しているが、今回の展示では各種センサーと無線機能を組み込んだ無線モジュールの防爆認証を取得したことが最大のトピックとなる。
日本精機は、「第42回 プラントメンテナンスショー」(2018年7月18〜20日、東京ビッグサイト)において、クラウド型遠隔監視システム「SMASH(Smart Sharing System)」を披露した。既に2017年秋に発売しているが、今回の展示では各種センサーと無線機能を組み込んだ無線モジュールの防爆認証を取得したことが最大のトピックとなる。これを契機に、主な顧客とする石油化学プラントなど防爆機器の仕様が必須の工場に向けた提案活動を加速したい考え。
日本精機の「SMASH」の展示デモ。写真左側の偏心状態のモーターと同右側の通常状態のモーターの振動データをセンサーモジュールで取得し、ゲートモジュールを介してクラウドに集積、表示している(クリックで拡大)
SMASHは、振動や温度を検知できる無線モジュール、センサーデータをクラウドに収集、蓄積するゲートモジュールから構成されている。ゲートモジュールと複数の無線モジュールの通信には、2.4GHz帯の無線メッシュネットワーク「SmartMESH IP」を用いてつなげている。SmartMESH IPは、物理層にIEEE 802.15.4を用いるメッシュネットワークで、通信が切れにくいことを最大の特徴としている。モジュール間の通信可能距離は約100mで、1つのネットワーク上に50台までのモジュールを接続することが可能だ。「巨大プラントも十分にカバーできる」(日本精機の説明員)という。なお、ゲートモジュールの携帯電話通信とクラウドはインターネットイニシアティブのソリューションを採用した。
日本精機は、自動車のメーターやデジタルクラスタなど車載部品メーカーとして知られる。SMASHは、防塵(じん)、防水、耐熱、耐振動といった耐環境性能を求められる車載部品の開発、生産ノウハウを生かしてスマート工場ソリューションに仕立てたものだ。「耐環境性能を実現する技術を無線モジュールなどに組み込むことで、一般的な組み立て工場よりも環境条件の厳しい現場で利用してもらえると考えた」(同説明員)。
SMASHの無線モジュールは4種類。振動センサー×2ch、温度センサー×1ch、4-20mA出力のアナログセンサー×1chを組み込んだ「センサーモジュール」、温度センサー×3chの「温度センサーモジュール」、4-20mA出力のアナログセンサー×3chの「ADモジュール」、圧力センサー×3chの「圧力センサーモジュール」だ。センサーモジュールとADモジュールは販売中で、温度センサーモジュールは開発中。企画中の圧力センサーモジュールは今展示会で引き合いを確認した上で開発に入りたい考えだ。
防爆認証については、最も汎用的な機能を持つセンサーモジュールについて、国際規格であるIECExの「EX ic IIB T4」を取得している。国内の防爆規格についても認証を取得した。なお、他の無線モジュールについても順次防爆認証を取得する予定だ。
これらの他、SMASHの製品として訴求しているのが、センサーモジュールと同様に防爆認証取得済みの「ノッカー」だ。ノッカーはNFC機能を有しており、同じくNFC機能を持つ無線モジュールと連携して、機器のオンオフ、メンテナンスの記録や管理、さまざまな作業の共有管理に利用できる。防爆対応の無線モジュールはスイッチなどを持たないため、現場でそのオンオフを操作することができない。ノッカーを使えばそれが可能になる。また、ICカードベースの作業者IDカードと作業内容カードを組み合わせることで、作業管理にも応用できる。「一般的なスマート工場ソリューションだとスマートフォンを活用するところだが、防爆エリアでスマートフォンは使えない。防爆認証を取得したノッカーを活用してもらいたい」(同説明員)としている。
SMASHの価格は非公開。ただし、ゲートモジュール、センサーモジュール×5、ノッカー、クラウドや通信費込みのレンタルお試しセットを月額約8万円で提供している(レンタル利用は最大3カ月まで)。
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