中小製造業における業務プロセス改善の効果と成功のカギ:2018年版中小企業白書を読み解く(1)(2/4 ページ)
中小企業の現状を示す「2018年版中小企業白書」が公開された。本連載では「中小製造業の生産性革命は、深刻化する人手不足の突破口になり得るか」をテーマとし、中小製造業の労働生産性向上に向けた取り組みを3回に分けて紹介する。第1回は現在の状況と業務プロセス改善への取り組みについて解説する。
中小製造業において不足している人材とは
それでは、実際に中小製造業ではどのような人材が不足しているのだろうか。中小企業白書2018では、中小企業が求める人材として、高い専門性や技能などを有し、事業活動の中枢を担う「中核人材」と、中核人材の指揮を受けて労働力を提供する「労働人材」の2つを区分。「労働人材」「中核人材」におけるそれぞれの不足感を見ると、「労働人材」の不足感が63.8%、「中核人材」の不足感が56.1%となり、「労働人材」不足を強く感じていることが分かる。
他業種においても、運輸業の81.9%、建設業の71.4%など多くの業種で「労働人材」不足を強く感じていることが見て取れる。一方「中核人材」についても、各業種の約半数以上の企業に不足感がある。全体的な人材不足が深刻化しているが主に労働力不足の方がより色濃く出ているというのが実情だといえる(図5)。
こうした労働人材不足に対して中小企業が行っている対策については「賃上げなどの労働条件改善による採用強化」が最も多くなっており、続いて「多様な人材の活用」「従業員の多能工化、兼任化」「業務プロセスの改善や工夫」となっている(図6)。
ここで挙げられた労働人材不足への対応のうち、本稿では「生産性革命」という視点から特に「従業員の多能工化、兼任化」「業務プロセスの改善や工夫」「IT導入、設備投資による省力化」「労働人材が担っていた業務のアウトソーシング」の取り組みについて掘り下げる。まずは、生産性向上のベースになると思われる「業務プロセスの改善や工夫」について見ていきたい。
業務プロセスの見直しの具体的な施策と課題
「業務プロセスの改善」について、実際に業務見直しを行った中小企業が行った具体的な取り組みとしては「業務の標準化・マニュアル化」が一番多く挙げられた。次に「不要業務、重複業務の見直し、業務の簡素化」が挙げられており、「業務の見える化」と続いている(図7)。
一方で業務プロセス見直しの課題については、「業務に追われ、業務見直しの時間が取れない」が50.6%と最も回答割合が高くなっており、次いで「取り組みを主導できる人材が社内にいない」「取り組みの目的や目標がうまく設定できない」という回答が続いている(図8)。現状の業務に追われて時間の確保が難しいうえ、推進役となる人材が不足しているなど、業務見直しを行うための環境が整っていない企業も一部存在することが明らかとなった。
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