ADAS自動運転用センサーは2030年に3兆円市場、レーダーは1兆4000億円規模に:自動運転技術
ADAS(先進運転支援システム)や自動運転用センサーの世界市場規模は、2030年に3兆円を突破――。矢野経済研究所は、ADASと自動運転用のキーデバイス・コンポーネントの世界市場について調査結果を発表した。
レーダー、カメラ、LiDARのセンサーフュージョンが進展
ADAS(先進運転支援システム)や自動運転用センサーの世界市場規模は、2030年に3兆円を突破――。矢野経済研究所は2018年6月29日、ADASと自動運転用のキーデバイス・コンポーネントの世界市場について調査結果を発表した。
矢野経済研究所がまとめた調査レポートによれば、ADASや自動運転機能を実現するために用いられるセンサーの世界市場は、2017年に8959億円規模となるなど、拡大基調が続いている。2020年以降は自動運転もレベル3以上の実用化に向けて、センサー技術の革新と市場拡大が進む見通しだ。この結果、2030年におけるADAS/自動運転用センサーの世界市場規模を3兆2755億円と予測した。
2016年より標準装備化が活発となった自動ブレーキ(AEB)などが、センサー需要を押し上げた。中でも、車両の前方を検知する77GHzミリ波/24GHz準ミリ波レーダー市場は2017年に3969億円の規模となった。センシング用と周辺確認用のカメラ市場は2017年に4458億円で、同様に超音波センサーの市場は506億円、レーザーレーダーは赤外線レーザーを中心に25億円となっている。
自動運転のレベルに応じたセンサー搭載
ADASや自動運転システムでは、実現する運転の自動化レベルに応じて、必要となる機能や搭載するセンサーの種類、個数も異なる。運転支援のレベル1の対応では、カメラとミリ波レーダーを中心に構成されたシステムをフロント部に搭載している。車線変更の支援などを伴う部分的自動運転のレベル2では、レベル1の機能に加えて、車両の前後左右に短距離ミリ波レーダーなどが搭載される。
条件付き自動運転であるレベル3や、ドライバーによる運転を前提としないレベル4〜5の対応になると、高速道路や一般道路を安全に自律走行する機能が必要である。このために、ミリ波レーダーやカメラに加えて、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)などが必要となる。これらのセンサーを連携させることで、壊れにくく、より安全なシステムを実現することができる。2023年ごろにはソリッドステート型LiDARの製品投入が活発になると予想する。
2020年には200万画素以上のCMOSセンサーが導入され、2021年以降はCMOSプロセスの小型で低コストのミリ波レーダーの量産が本格化するとみている。レベル3以上に対応する車両では、搭載されるレーダーが8〜10個、カメラは最大8個必要になると分析する。さらに、レベル4やレベル5対応車には、これらのセンサーが1台当たり20個も搭載されると予測する。
調査結果によると、2020年におけるADAS、自動運転用センサーの世界市場は、1兆6688億円と予測した。内訳はレーダーが7692億円、カメラが8132億円、超音波センサーが838億円、レーザーやLiDARが24億円である。2025年の市場規模は2兆9958億円を見込む。
2025年以降はレベル3対応モデルの市場が本格的に立ち上がる見通しだ。このため、ADAS、自動運転用センサーの市場も拡大し、2030年には3兆2755億円と予測した。このうち、レーダーは1兆3914億円、超音波センサーは904億円、カメラは1兆2976億円、レーザーとLiDARは4959億円の市場規模を見込んでいる。
今回の調査は、2017年8月〜2018年5月に行った。自動車メーカーやカーエレクトロニクスメーカー、半導体メーカー、センサーメーカーに対して、専門研究員によるヒアリングなどを実施した。調査対象の製品は、77GHzミリ波レーダー、24GHz準ミリ波レーダー、センシングカメラ、リアビューおよびサラウンドビューカメラ、赤外線レーザー、LiDAR、超音波センサーである。
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