混沌から湧く元気で、1社では作れない物語を生む――大阪ケイオス(大阪府):地方発!次世代イノベーション×MONOist転職
「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第29回。今回は、各社のモノづくりを「ものがたり映像」で発信し、企業が連携して人材育成や技術の高度化、事業拡大に取り組んでいる大阪府の「大阪ケイオス」を紹介する。
イノベーションの概要
「大阪ケイオス」は、大阪のモノづくり中小企業経営者たち19人の共同出資によって、2010年に設立された株式会社である。参加企業のビジネス拡大と大阪を元気にすることを目的に、映像による情報運用を行い、また企業が枠を超えて連携し、共同での受注や開発、人材の採用や広報、CSR活動などに取り組んでいる。
大阪ケイオスは、活動開始と同時に、まず参加10社の「ものがたり映像」を制作。事業の1つである「ものづくり企業支援サービス」でも、企業PR映像の制作をはじめ、パンフレットやWebページなどの制作、展示会サポートなど、モノづくり企業の情報発信を支援している。
学生と経営者が直接出会い、会話をする合同会社説明会、経営者と内定者の信頼関係を築く内定者ミーティングや新入社員研修なども合同で実施。あの「コマ大戦」の主催や、商品の企画・開発などを連携して行っている他、不良品や不要品をよみがらせる「Up Cycle Factory」、大学生が「3S」を学んで体験する「3S実践」、経営者の思いに触れるコンソーシアム型インターンシップ「工場萌えツアー」など、産学官連携にも取り組んでいる。
イノベーションの地域性〜大阪府といえば……
大阪といえば、文化、食、人、あるいは阪神タイガースなど、人それぞれイメージするものが1つはあるのではないだろうか。
歴史を少し振り返ると、大阪は江戸時代には、日本の経済、物流の重要な役割を果たした「天下の台所」。豊かな食文化とともに、町人文化が成熟し、起業家精神や合理精神が育った。インスタントラーメンも、カップ麺も、世界で初めて大阪で誕生しているのは、合理性の現れなのかもしれない。
大阪府は都道府県で2番目に小さいが、人口は東京都、神奈川県に次いで3番目に多い。大阪府のモノづくり企業の事業所数は全国一で、全国のモノづくり企業の10社に1社が立地している数に相当するそうだ。工業生産に占める中小企業の割合は65%で、中小企業の街でもあり、技術力が高く、独自の技術を持つ企業や、世界的に高いシェアを持つ企業も多い。中でも、東大阪市は中小のモノづくり企業が集積していることで知られ、事業所数は6000を超え、工場密度では全国一である。
ここに注目! 編集部の視点
現在、大阪ケイオスの参加企業は17社。2018年4月に発行された「Osaka Chaos News VOL.4」の中で、大阪ケイオス 代表取締役社長で、新日本テック 代表取締役社長である和泉康夫氏は、大阪ケイオスでは経営者同士だけでなく社員同士のつながりもあり、「企業間で深い関係を構築するジャストサイズと感じている」と記している。企業連携というと技術連携を想像しがちだが、「自社運営にフィードバックできる採用・教育、情報運用、文化連携が土台」で、「特に重視しているのは採用・教育の分野」であると和泉氏は言う。
「大阪ケイオス」の「ケイオス」とは、すなはち「カオス(混沌)」。「『大阪』がもつ高度なモノづくり基盤に、大阪持ち前の元気な『人』のエネルギーが満ちた状態」を表現しているそうだ。「モノづくりをものがたり化する」「1社でできないことは皆でやる!」「1社ではつかめないチャンスをみんなでつかむ!」をコンセプトに立ち上がった大阪ケイオス。各社の「有形・無形の資産を発信するだけでなく、情報を運用し製品、技術、サービスの高度化と連携を図る」というこのビジネスモデルは「これからの中小企業連合が目指す1つの理想の姿でもある」としている。
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