シェア漸減を打破するブリヂストンのデジタル変革、スマート工場の確立も着々と:製造業IoT(2/2 ページ)
ブリヂストンは、モノ売りからコト売りへの移行やスマートファクトリーを中心としたデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の取り組みについて説明。単純にタイヤ製品の性能を良くしていくだけでは、新興メーカーとの差別化が難しい状況にあり、顧客の困りごとを解決するソリューションプロバイダーへの移行を進めているという。
スマートファクトリー基盤「BIO/BID」を展開
4つ目のスマートファクトリーの取り組みについては、ブリヂストン 執行役員 タイヤ生産システム開発担当の國武輝男氏が説明した。タイヤ生産は1990年代から自動化が始まっており、近年はIT活用による自律化が進んでいるところである。「人手を使う作業が減り、収集できるデータは増えている。今後はデジタル技術のさらなる進化が必要だ」(國武氏)。
ブリヂストンのスマートファクトリー基盤は「BIO(Bridgestone Intelligent Office)/BID(Bridgestone Intelligent Device)」と呼ばれている。設計情報やフィールド情報を収集して解析を行うBIOが“頭脳”であり、BIOの分析結果から得られたアルゴリズムを基にMES(生産実行システム)などと連携するAI制御モジュールを用いて“実行”するのがBIDとなる。
BIO/BIDは、2016年6月に発表したタイヤ自動成型システム「EXAMATION」に適用されている※)。従来比で生産性が2倍、品質が15%向上し、作業員の工数を3分の1に減らす効果が得られた。現在は、性能改善を図りながら、彦根工場とハンガリー工場に展開しており、今後も国内外で展開を広げていくとしている。
※)関連記事:伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へ
この他、PLCから反復/間欠動作情報を効率的に取り出し解析/状態監視につなげる「タイミングアナライザー(TA)」は、PLCに専用モジュールを取り付けるだけという手軽な技術だ。ミリ秒単位での時間同期情報が得られるので、標準時間設定と最適チューニングや、専用のセンサーを使わずに故障検知を実現することなども可能になるという。
乗用車用タイヤと異なり、手作業による生産プロセスが多い大型タイヤについては、熟練工の作業データをデータ化し、カンコツを定量化して技能伝承につなげる取り組みを進めている。「将来的には定量化したスキルを自動装置に実装したい」(國武氏)という。
さらには、材料開発、構造開発、仮想試作から成るバーチャルシミュレーションシステムなどのデジタルエンジニアリングによって開発プロセスの変革も進めている。なお、BIO/BIDを基盤とするこれらの技術は、2019年から順次導入を広げていく計画だ。
2019年までにデータサイエンティストを100人育成
これらのデジタル変革を推進するために、ブリヂストン社内にデータサイエンティストを育成する取り組みも進めている。SAS Institute Japanとの協業による育成プランで、一定のスキルを有する「アソシエートDS」を2019年までに100人まで増やす。三枝氏は「現在進めているデジタル変革の取り組み必要な数として100人を目標としたが、今後も業務がデータドリブンになっていくことに合わせて、データサイエンティストを増やす必要は出てくるだろう」と述べている。
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