JEMA「製造業2030」が進化、FBMの活用を具体化:製造業IoT(1/2 ページ)
日本電機工業会(JEMA)は、IoTによる製造業の変革に関する提言書「製造業2030」の2017年度版を公開した。本稿ではこの提言を抜粋して紹介する。
日本電機工業会(JEMA)は2018年5月16日、IoT(モノのインターネット)による製造業の変革に関する提言書「製造業2030」の2017年度版を公開した。本稿ではこの提言を抜粋し、JEMAが定義する「Flexible Business and Manufacturing(FBM)」の最新動向について紹介する。
JEMAが提言する製造業の未来像「製造業2030」
IoTが生み出す変化は第4次産業革命ともいわれ、製造業のビジネスモデルを大きく変革しようとしている。こうした動きを受けてJEMAも2015年8月にスマートマニュファクチャリング特別委員会を発足し、製造業革新に向けての提言を行ってきた。こうした中で2016年5月に提言書「製造業2030」を初めて発表し、2017年5月にはこれをブラッシュアップした2016年度版「製造業2030」を公開している※)。
※)関連記事:IoTが変革する製造業の2030年、JEMAが「製造業2030」最新版を提言
JEMAの「製造業2030」では、製造業のビジネスの基本単位として「FBM」を定義している。「FBM」は、生産を含む製造業のビジネス機能群がリアルタイムにかつフレキシブルに働き、ビジネスモデルや機能の組み合わせを変化させるという製造業モデルである。基本的なバリューチェーンを構成する要素として、サプライヤー、ユーザーなどの主体者や、販売、生産、エンジニアリング、企画、商品開発、品質保証、保守などの製造業のライフサイクルを構成する工程などを規定。これらをFBMプラットフォームとして、バリューチェーンにおいて組み合わせることで表現する。
2016年度版ではこのFBMを組み合わせ、製造業内の対象ビジネスを表現する「FBMモデル」を用意した。
2017年度版「製造業2030」では、この「FBM」による表現をさらに進化させ、製造業内で想定されるさまざまなビジネスシナリオについて定義した他、20の要件を具体化したことが特徴である。
ビジネスシナリオの用意
FBMの活用を具体化するために2017年度版「製造業2030」ではあらためて、製造業内におけるビジネスシナリオを用意し、意識の共有を推進する。
具体的には、サーボアンプ、基板、回転電機、物流システム、アグリカルチャー(農業、植物工場)、金融、日本酒製造などにおいてビジネスシナリオを用意。それぞれにおいて2018年の現状、2030年の姿を示し、ビジネスシナリオの付加価値とフレキシブル性、実現のための要求事項などを定義している。
例えば、サーボアンプでは、現状を「フルカスタマイズ製品を提供するのが理想だが実現には短納期や製品コストが課題となり、現状は企業側が最大公約数的に要件を定義して製品化しているのが実情」とする。2030年の姿としては「ハードウェアはオープン化されたモジュール基板を組み合わせるだけで製品(モノ)になる。ソフトウェアとすり合わせて、ユーザーが望む製品(コト)となるようにカスタマイズして提供する」ことを目指すという。さらにこれらを実現する要求事項としては、以下の5点を挙げている。
- ハードウェアとソフトウェアのモジュール化
- 情報セキュリティ対策手法
- 製品設計情報と設備特性情報による製造可能な工場の検索技術
- あらかじめ認証を受けた部品リストおよび設計ツールの存在を前提とした再認証処理の不要な設計技術
- カスタマイズのためのユーザーの要求仕様データの定義と高速な分析方法の確立
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