トヨタと開発したグローバル通信プラットフォームを他業種展開、KDDIが日立と協業:製造業IoT
KDDIと日立製作所は、IoT(モノのインターネット)分野で協業すると発表した。KDDIはトヨタ自動車が採用するグローバル通信プラットフォームを、自動車以外の産業にも提案する。日立製作所はグローバル通信プラットフォームと自社のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を連携させ、日立産機システムの産業用インクジェットプリンタで2018年7月から試験的に導入する。
KDDIと日立製作所は2018年6月7日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)分野で協業すると発表した。KDDIはトヨタ自動車が採用する「KDDI グローバル通信プラットフォーム(以下、グローバル通信プラットフォーム)」を、自動車以外の産業にも提案する。日立製作所はグローバル通信プラットフォームと自社のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を連携させ、日立産機システムの産業用インクジェットプリンタで2018年7月から試験的に導入する。
また、KDDIは2019年度から、IoT機器向けの通信接続やIoTサービスの展開、収集したデータの分析までを50カ国で提供する「IoT世界基盤」を商用化し、自動車や産業機械、建設機械などさまざまな製品に向けて提案していく。
通信コストをローミングの半額以下に
グローバル通信プラットフォームはトヨタ自動車とKDDIで企画、設計し、KDDIが開発と運用を担っている。他の事業者も利用できるようにする仕組みとして発表された。同プラットフォームは、車載通信機(データコミュニケーションモジュール、DCM)に内蔵したSIMの設定情報を通信によって書き換え、KDDIが取引のある各国の通信事業者の回線に直接接続させるもの。ローミングサービスを介さないため、通信コストを従来の半額以下に抑えられるという。また、通信回線の統合管理・監視を実現する。
国や地域をまたいでも安定した回線に切り替わるようにし、つながるクルマの利用環境を整える目的のプラットフォームだったが、2019年度に商用化するIoT世界基盤では、自動車以外にもさまざまなモノの通信接続や統合管理を実現する。
DCMの課題は、自動車に限らずIoTに取り組む企業に共通すると見込み、グローバル通信プラットフォームを自動車以外のさまざまな製品にも向けて展開する。これまでDCMは、トヨタ自動車が国や地域ごとに通信事業者を選定し、接続する通信回線を決めていた。そのためDCMは国や地域によって仕様が異なっており、DCM搭載車両が国境を越えて移動した場合に、通信の品質が確保されなかったり、割高な通信料金が発生したりする事例があった。これらの課題を解決する。
KDDIはグローバル通信プラットフォームによる通信接続だけでなく、パートナー企業のIoTプラットフォームとの連携も進める。日立製作所のルマーダと連携することで、業界ごとの特徴に合わせたIoTサービスを提供し、市場開拓につなげる。ルマーダは電力や交通、製造、物流などの分野で、機器の故障予測による稼働率の改善や、交通情報を活用した輸送計画の最適化など500件を超えるユースケースを積み上げてきたという。
日立産機システムが販売する産業用インクジェットプリンタでグローバル通信プラットフォームを導入するのは、印字品質の管理や、安定稼働を支援するための遠隔モニタリングをグローバルで導入し、メンテナンスサービスを向上するのが狙いとなる。
同社の産業用インクジェットプリンタは世界で10万台が稼働している。従来は有線接続でルマーダと連携させて遠隔モニタリングを実現していた。しかし、ルマーダはネットワークに接続した製品のデータを分析することを前提としており、既設の製品を接続させる場合やレイアウト変更の際に追加工事が発生するのが課題だった。一方、無線接続は、通信の安全性の確保や設定の作業が煩雑なため導入が難しかった。
今後、日立製作所は産業用インクジェットプリンタ以外にも、建設機械や工場の生産設備、社会インフラの設備管理など幅広い分野を対象にKDDIと連携していく考えだ。
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