パナソニックが目指すAI活用の方向性とは「AIも半導体設計も同じことが起こる」:人工知能ニュース(2/2 ページ)
機械学習自動化プラットフォームを展開するデータロボットが開催した「DataRobot×パナソニック トークセッション〜日本の製造業におけるAI利活用の最前線〜」で、パナソニック ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏が登壇。同社におけるAI技術普及の取り組みなどについて語った。
米国のデータ解析会社・アリモ買収の狙い
パナソニックは2017年10月、米国のデータ解析会社であるアリモ(Arimo)を買収している。井上氏はその狙いについて「パナソニックは画像や音声といったAV系のAIはこれまでやってきた経験もありすんなりと取り組めている。課題は、センサーデータや時系列データなどのデータ解析になる。そこで、データ解析のプロフェッショナルが多数所属するアリモを買収することにした」と説明する。買収から半年が経過し、B2BC機器の省エネ技術にAIを適用するなど成果が見えつつある。
また、AIのプロフェッショナルを多数抱えるアリモを買収する一方で、データロボットのようなAI関連ツールの活用もさらに加速させるという。「現在、AI技術の活用を加速するにはアリモのようなプロフェッショナル集団の力が必要だが、最終的にAIでもツールによる自動化の波が来ると考えている、かつて私が担当していた半導体設計も、海外の自動化ツールによって一気に潮目が変わったことがあった。AIも同じことが起こると考えており、その自動化ツールの有力候補としてデータロボットに注目した」(井上氏)。
「HomeX」プロジェクトにもAIを活用
現在、パナソニックにおけるAI技術の取り組みでは、これまでも得意としてきた画像や音声を扱うAV系ではさまざまな製品が発表されている。これらの他、データロボットなどを活用して、工場の故障予測、店舗の需要予測/行動分析、材料インフォマティクスなどにも展開している。井上氏は「米国で進めているプロジェクト『HomeX』は家電や住宅設備、住宅家屋の在り方を模索しているが、既にデータが数百億件集まっておりクロス分析に掛けたいと考えている」と例を挙げる。
この他、製造業でのAI活用の方向性について「大量生産によるモノづくりを変えるイノベーションによる新事業創出」と「業務プロセスの効率化」の2つがあるとした上で「前者は、コストやROI(投資収益率)を決め切れなかったり、統計学に基づくAIでは100%を保証できなかったりといった課題があり難しいことは確かだが、ぜひ取り組んでいきたい」(井上氏)とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パナソニックが目指すAIの“使いこなし”とは
パナソニックがAI(人工知能)の活用に注力する姿勢を鮮明にしている。2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部傘下のAIソリューションセンターは、AIの“使いこなし”を進めて、従来にない新たな事業の立ち上げも担当していく方針だ。同センター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏に話を聞いた。 - パナソニックに“出戻り”のCerevo岩佐氏、100年企業に与える「いい刺激」とは
ハードウェアベンチャーの雄、Cerevo(セレボ)の代表取締役である岩佐琢磨氏が、2007年の同社創業前に勤めていたパナソニックに11年ぶりの“出戻り”を果たす。なぜパナソニックへの“出戻り”を決めたのか。そして、パナソニックで何をやろうとしているのか。同氏に聞いた。 - パナソニックの公共システム事業を形作る「1件名1仕様」と「逆T字型モノづくり」
国内の官公庁や法人向けにシステムソリューションを展開するパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の公共システムセンターでは、公共市場向けのインフラシステム事業を扱っている。事業の特徴は、「1件名1仕様」と「逆T字型モノづくり」だ。 - 樋口流パナソニックCNS社改革は3階建て「26年前に辞めた理由を一生懸命排除」
パナソニックは2018年5月30日、4つのカンパニーの事業方針を投資家向けに説明する「Panasonic IR Day 2018」を開催。コネクティッドソリューションズ(CNS)社については、2017年4月のAVCネットワークス社からの改称と同時に社長に就任した樋口泰行氏が説明した。 - イノベーションの量産は可能か、パナソニックが目指す“コト作り”の製造装置
パナソニックは、2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部の戦略として、社会課題の解決に向けたイノベーションを量産化する仕組み作りに取り組む方針を示した。 - 越える業種の壁、トライアルが目指す流通革命とパナソニックが目指す工場外自動化
人手不足に悩む流通業界だが、改革を実現するには何が必要だろうか。トライアルカンパニーは、ITとオートメーションの活用に活路を求めた。トライアルカンパニーがパナソニックと組んで取り組む、流通改革の現場を追う。