産学連携による人工知能を活用した乳房エコー画像診断システムの開発:医療機器ニュース
東北大学は、SAS Institute Japanの「SAS Viya」を採用し、乳がん診断の補助として、深層学習を用いて乳房エコー画像内の腫瘤注の識別を目的とした研究を開始した。乳房エコー検査の自動診断の実用化を目指す。
東北大学は2018年4月9日、SAS Institute Japan(SAS)の「SAS Viya」を採用し、乳がん診断の補助として、深層学習を用いた乳房エコー画像内の腫瘤注の識別を目的とした研究を開始したと発表した。同大学大学院医学系研究科 教授の山口拓洋氏らの研究グループがSASと協力して行い、乳房エコー検査の自動診断の実用化を目指す。
研究グループは、エコー画像の読影に深層学習の技術を活用することを検討。そこで、画像を認識して高精度で分類・推論できる深層学習の手法CNNに注目した。CNNは対象の識別に有効な特徴量を学習によって自動的に獲得する点が特徴で、多様な特徴を示す乳がんの病変への診断応用に適すると考えられる。
そこで、CNNの実装が可能なSAS Viyaを採用し、超音波画像を自動診断するシステムを作成。その精度および有用性について検討する。SAS Viyaは、データの探索から機械学習までデータ分析ができるAI(人工知能)プラットフォームだ。
乳房エコー検査では、技師や医師の主観や経験に依存しがちであり、読影による負担の増加が課題となっている。乳がんの主要な画像所見である病変は、良性と悪性の判別が難しい場合も多く、より正確に判定できる技術が求められている。
深層学習による自動診断が実用化すれば、画像診断の際に医師の負担を軽減し、さらに、偽陽性による無用な侵襲的検査や患者の心理的負担を回避できる。医療費の削減にもつながることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 医療分野のAIは自動診断だけじゃない、シーメンスヘルスケアが製品に順次搭載
シーメンスヘルスケアが東京都内で会見を開き国内の事業戦略を発表。「医療デジタル化の推進」で重要な役割を果たすAIの採用について説明した。AIによる自動診断が注目を集めているが、既に解析を助ける機能として順次製品に搭載し始めているという。 - 医療画像AIプラットフォーム事業の合弁会社を設立
三井物産とテクマトリックス(TMX)は、医療画像AIプラットフォーム事業の合弁会社NOBORIを設立した。両社はNOBORIの医療画像管理クラウドサービス事業を拡大しつつ、読影診断支援AIサービスや医療施設と連携したサービスを開発・展開していく。 - AI導入や医療画像処理高速化へ、GEヘルスケアがNVIDIAやIntelと協業
米GE Healthcareが、AIプラットフォーム導入のために米NVIDIAと10年間のパートナーシップを締結した。さらに、エッジやクラウドを通じて展開されるデジタル画像処理高速化に向けて米Intelとの提携拡大を発表した。 - がんプレシジョン医療にAIを活用、治療率が6倍に
がん研究会、がん研究所、FRONTEOヘルスケアは、最先端のゲノム解析技術とAI(人工知能)を用いて「がんプレシジョン医療」を実現するシステムの開発に向けた共同研究を開始する。現在、一般的で明確ながん治療法が当てはまらないがん患者の治療率は5%程度だが、共同研究により治療率を6倍の30%まで高められる可能性がある。 - IoT/AIを活用した未来型医療の共同研究・実証を行う研究所を設立
佐賀大学とオプティムは、IoT/AIなどを活用した研究を行う「メディカル・イノベーション研究所」を設立した。医療現場の課題に対し、効率的で効果的な医療を実施する研究を行う。