迷宮入り殺人事件も解決したNECの6つの生体認証技術で新たな価値を編め:組み込み開発ニュース(3/3 ページ)
NECは同社の生体認証ブランド「Bio-IDiom(バイオイディオム)」に関する記者説明会を開催。生体認証事業関連の組織を増強し、いよいよグローバルでBio-IDiomを本格展開していく。同社が強みとする6つの生体認証技術やグローバルでの事例についても紹介した。
耳音響認証や顔認証
耳音響認証は、耳の穴の反響特性で個人を特定する方式で、NECと長岡技術科学大学の共同研究による独自技術だ。「ヒアラブルデバイス」と呼ぶマイク一体型のイヤフォンを用いて、送信音に対する反響音の特徴量を測定し、個人差を分析していく。検知は高精度かつ安定しており、1秒以内で検知可能だという。耳の穴も人体の内部なので、偽造はほとんど不可能だという。ヒアラブルデバイスが盗難に遭ったとしても、認証をクリアした人物のみしか音が聞こえないため、通信の秘匿性も確保できるとしている。またデバイスは多くの人になじみがあるイヤフォン型であるため、日々の生活の中で着用しやすいとしている。
従来の顔認証は、個人が意思をもってカメラに顔を向けなければならない静止画画像認証が主流であった。NECの顔認証技術はリアルタイムに流れる動画からも個人識別が可能なことが特長で、監視カメラ画像などのように、対象となる人物の意思がカメラに向いていなくてもよい。あらかじめ登録しておいた顔画像とIDを照合する。顔の画像は、当然限度はあるものの、さまざまな角度から検知できる。またカメラからの距離が離れ、解像度が低下しても検知ができる。そこへさらに、人の視線の動きを分析する技術を組み合わせれば、不審者の検知に利用することも可能だという。
NECの持つ通信スループット予測技術も組み合わせることで、リアルタイム映像配信を最適化し、検知画像の品質や検知精度をより高めることが可能だ。イベント会場などで通信が混雑した際には、近隣の比較的空いている基地局を探して利用するようにして、リアルタイム動画のビットレートやフレームレートの制御が可能だという。
迷宮入りの殺人事件も解決する生体認証
NECのマルチモーダル認証と映像分析の組み合わせで課題を解決することにより、価値を高める、あるいは新たな価値を生むといった実績は既に積んできている。同社の生体認証は、既に70カ国以上で700システムが採用されているという。世界の50の空港でもNECの生体認証が実際に使われている。
生体認証事業のグローバル展開の事例として、田熊氏はまずインドの固有識別番号プログラム「Aadhaar(アドハー)プログラム」を挙げた。13億人を超える人口のインドでは国民情報の正確な把握が課題となっている。年金の不正受給なども社会問題になっているという。インドの固有識別番号庁(UIDAI)が推進するアドハープログラムでは、国民に固有のIDを発行し、そこに国民の名前や住所、生体情報をひもづけて収集・管理している。IDを二重発行することができないよう、指紋と顔、虹彩の認証技術を用いて、既存の登録情報と新規の登録情報を自動照合できるようになっている。この技術で、国全体の安全や安心を実現しながら、個々の国民に効率かつ公平な社会サービスを提供することで生活の質の向上もかなえたという。
米国カリフォルニア州のロサンゼルス郡保安局の例では、犯罪解決に有効な技術としてNECの生体認証が活用されている。顔、虹彩、指紋・掌紋のモーダル認証と併せ、見える化と分析を実施している。稼働後の1週間だけでも、107件の未解決事件の被疑者逮捕や事件解決に寄与したという。そのうち2件ほどは、長年解決されず、いわゆる“迷宮入り”していた殺人事件が含まれていた。
アルゼンチンのブエノスアイレス州ティグレ市においても、市中監視に顔認証と映像分析技術を活用している。監視システムの採用により車両盗難は従来の8割に低下し、観光収入も3倍に増加したとのことだ。
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