国産有機ELの夢をのせて、これから始まるJOLEDの旅路:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(8)(3/4 ページ)
スマートフォン向け、テレビ向け、ともに韓国勢に市場を押さえられている有機EL。かつては有機ELの開発に注力していた日本にとって、印刷方式の有機ELを世界で初めて実現し、量産も始めたJOLEDは最後の希望だ。小寺信良氏が、JOLEDの印刷方式有機ELの可能性と、今後の同社の展開を探る。
印刷方式のアドバンテージ
―― 従来の蒸着方式と印刷方式を比較すると、どういうメリットがあるんでしょうか。
後藤 印刷方式のメリットというのは、必要な色を必要な場所にだけ形成できるということが大きいんです。
白色ELの場合は、全ての色を全面に塗ってしまうので、それだけ材料費を食ってしまいます。さらに必要ない部分をカラーフィルターでカットするやり方ですので、実際の発光には材料の3分の1しか使っていないんですね。
われわれの方法は、RGBそれぞれ塗り分けますから、材料が何分の一で済む。材料の利用効率が高いというのが大きな特徴です。
―― 白色ELの場合、カラーフィルターでRGB以外にホワイトも用意しています。JOLEDでは何か画素配列に工夫はありますか?
後藤 今われわれが開発しているパネルはシンプルなRGB方式ですので、そこには大きな特徴はないと思っています。ただ高解像度を実現するとか、輝度を上げるなどのニーズがあれば、アレンジは必要になると思いますけども、今はスタンダードな形で一番作りやすい形からスタートしています。
―― 消費電力とか発光効率の面ではいかがでしょう。
後藤 そこも材料特性に由来する、特性の違いというのは出てくると思います。特に印刷する上でインク化が必要ですが、どういう材料を使うのか、そこの開発は古くから材料メーカーさんと一緒にやらせていただいて、年々進化してきています。
蒸着の場合は、当然採用メーカーさんも多いし、材料メーカーさんも多いという部分での競争による進化があります。そこは、これから追い付いていかないとな、というところだと思います。
―― 印刷方式はJOLEDが世界で初めて製品化できたわけですが、この方式独特の難しさというのは、どういうところにあるんでしょう。
後藤:まず材料自体が、インク化というワンステップを踏むということ。それと印刷する材料を、決まった位置に塗布する印刷技術。これは印刷装置に大きく依存するところもあります。その装置とインクの材料とのマッチング、それから実際に塗れたとしても、その材料の性能を十分に発揮するデバイスの構造であるとか、それを作るプロセスであるとか、こうしたすり合わせが非常に難しい部分だと思います。
―― 印刷で塗布するというのは、基本的にはインクジェットプリンタみたいなものを想像すればいいんでしょうか。
後藤 具体的な方法というのは特に公開はしていないんですけれども、イメージとしては間違ってないと思います。
加藤 印刷のやり方にもいろいろありまして、一般的なインクジェットプリンタのようにパネルの上をスキャンしていく方式と、われわれのように一括で全面に塗っていくという方式があります。それは印刷機のメーカーさんによって、方式が違います。
当然スキャンするより一括でさっと塗った方が生産性が高いわけですが、それだけ高精度な印刷ヘッドを横にちゃんと並べとかないといけないので、印刷装置としては非常にハードルが高いものになります。印刷装置は、パナソニックさんがもう10年以上前から印刷方式で有機ELをやるために、装置もデバイスもプロセスも全て開発してきました。当社とパナソニックさんとの間では、独占的にその印刷装置を使えるという関係になってます。
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