国産有機ELの夢をのせて、これから始まるJOLEDの旅路:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(8)(2/4 ページ)
スマートフォン向け、テレビ向け、ともに韓国勢に市場を押さえられている有機EL。かつては有機ELの開発に注力していた日本にとって、印刷方式の有機ELを世界で初めて実現し、量産も始めたJOLEDは最後の希望だ。小寺信良氏が、JOLEDの印刷方式有機ELの可能性と、今後の同社の展開を探る。
発足から3年で製品出荷、スピードの理由
―― この印刷方式のOLED(有機EL)、会社名のJOLEDというのがその方式名という文脈で語られる事も多いように思います。実際に製造法方式の名称ということなのでしょうか。
後藤真志氏(以下、後藤) 公式には、蒸着方式とは違い、印刷でやるというプロセスの特徴を生かして「印刷OLED」ということになります。あらためてこの方式に名前を付けるということはしていませんが、印刷方式=JOLEDと、代名詞的に使っていただければわれわれとしては本望です。
―― この印刷OLED、出来上がるものとしては、蒸着方式のOLEDと同じものができるということでしょうか。
後藤 出来上がる商品としては、RGB蒸着法と同じものになります。ただ、その作り方に特徴があるということです。
―― そもそもこの印刷方式というのはいつ頃から研究をスタートしたんでしょう。
後藤 われわれは、もともとソニーとパナソニックの技術を融合して会社ができたわけですけれども、その前身までさかのぼると結構歴史があります。私はパナソニックにいたんですが、パナソニックはパネルメーカーとしていろいろな方式の研究をやってきました。その中で、2006年には既にOLEDを印刷方式でやるという判断でスタートしています。
―― 一方でソニーが自社開発の有機ELを使い、2007年に11型の「XEL-1」を製品化しています。ただ、それ以降は続かなかった。あの当時モノにできなかった理由はどこにあったんでしょうか。
後藤 やはり性能とコストだと思います。例えばテレビとして使われるとしたら、デバイスとしての寿命であるとか消費電力といったところで、当時主流であった液晶、プラズマに対して、差別化、優位性をうたえなかったというところもあるでしょう。
もう1つ、製造コストがテレビをやるのには届かなかった。現在はテレビが無理ならスマートフォンという状況になっていますけど、それはニーズとコストと性能がマッチしてきたので、今広まってきているところだと思います。
―― パネルの寿命に関しては、以前からその難しさが言われていましたね。JOLEDの印刷方式は、従来の蒸着法と製造法が違うということで、寿命に関して影響を受ける部分があるんでしょうか。
後藤 一部はあると思います。成膜する方式が違うということは、使う材料が変わってきますので。印刷の場合は、発光材料をいったん溶剤に溶かしてインク化してから使用しますので、それに合った材料となってますし、インク化のステップを踏むことによって劣化度の変化もあるでしょう。その意味では特性自身はまったく同じにはなってないので、それぞれのメリット、デメリットがあると思います。
―― 2017年12月に、初の量産製品となる21.6型4Kパネルの出荷が開始されました。2015年の創業から3年で製品出荷、これは早いですよね。
後藤 早いと思います。会社設立の時には既に印刷でOLEDをやるという方針は固まっていましたが、その後もソニーの技術、パナソニックの技術、それらが融合してより良いところを学び合ってというステップを踏んでいます。それでも2016年に石川県の方にラインを作って、1年ちょっとで製品化していますので、新規にラインを起こして最初の商品を作ったということでは、ペースとしてはかなり早いですね。
加藤 2015年1月に会社が発足しましたが、実際にはその前の年から両社のチームはやりとりを始めていました。2015年9月には、まず1個目の試作としてフルHDの12.2インチができました。それぞれの会社が持っていたもの、研究開発の装置ですとか素材とかの蓄積があったので、このタイミングで実現できたと言うことですね。
この時点でクオリティーの高いものができたので、次のステップにつなげることができた。それから2016年1月に19.3型4Kパネルを実現できたので、今回の開発試作ラインを作ろうということになって、現在製品を出荷してる石川のパイロットラインを稼働させたという流れですね。
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