パナソニックに“出戻り”のCerevo岩佐氏、100年企業に与える「いい刺激」とは:モノづくり×ベンチャー インタビュー(3/3 ページ)
ハードウェアベンチャーの雄、Cerevo(セレボ)の代表取締役である岩佐琢磨氏が、2007年の同社創業前に勤めていたパナソニックに11年ぶりの“出戻り”を果たす。なぜパナソニックへの“出戻り”を決めたのか。そして、パナソニックで何をやろうとしているのか。同氏に聞いた。
パナソニック社内での横連携を優先しない
MONOist パナソニック社内での横連携についてはどう考えていますか。
岩佐氏 確かに“相互連携”は重要だが、パナソニック社内での横連携を優先するという意識はない。Shiftallにメーカーとしての機能を全てそろえたのは、パナソニック社内での調整を前提にしないと動けないような組織にはしたくなかったからだ。
かつて、eネット事業本部に在籍していたころ、自社の製品同士を連携するためのサーバ費用は持つことができたものの、ハードウェア側については「対応してほしい」という要望を言うことしかできなかった。このときの経験から実感したのは、eネット事業本部のようにハードウェア開発・販売の力を持たない組織に、他の事業部は付いてこないということだった。
だからこそShiftallは全ての機能を持ち、事業部の同意が得られないような場合でもビジネスイノベーション本部と同意ができれば、勝手に作って、勝手に売っていく。もちろん、IoT家電の利便性を生み出す“相互連携”のためのインタフェースなどは用意する。もしパナソニックの事業部内でShiftallの製品とつなげたいという要望があれば、つなげてもらう分には構わない。Shiftallの存在が、パナソニック社内でいい刺激になればと思う。
MONOist ビジネスイノベーション本部との連携はどのように進めますか。
岩佐氏 馬場さんが本部長に就任したビジネスイノベーション本部は、新たなビジネスイノベーションを生み出すためのさまざまな取り組みを進めているが、2017年度はコンセプトづくりの段階だった。Shiftallが入ることで、その方向を大きく後押しすることになるだろう。
以前にCerevoがShiftallと同じくらいの従業員数だったときに、年間3〜4製品を市場投入できていた。組織としてそれくらいの力はある。ビジネスイノベーション本部の取り組みに、これからShiftallという実行力が加わることになる。
MONOist 2018年度の目標を教えてください。
岩佐氏 最低限の目標だが、2018年度に1つは製品を発表したい。
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