触媒反応によるアルツハイマー病治療へ、近赤外光照射でアミロイドβが減少:医療技術ニュース
科学技術振興機構は、東京大学大学院薬学系研究科 教授の金井求氏らの研究グループが、マウス脳内のアミロイドβペプチド(Aβ)の凝集体を近赤外光の照射によって減少させる光触媒の開発に成功したと発表した。
科学技術振興機構(JST)は2018年3月16日、東京大学大学院 薬学系研究科 教授の金井求氏らの研究グループが、マウス脳内のアミロイドβペプチド(Aβ)の凝集体を近赤外光の照射によって減少させる光触媒の開発に成功したと発表した。今後、アルツハイマー病に関する触媒反応を用いた新たな治療法の確立が期待される。
アルツハイマー病は、Aβの凝集体による細胞傷害性がその発症につながると考えられている。これまで研究グループは、光照射によってAβ凝集体のみを選択的に酸素化し、Aβの凝集性や細胞傷害性を抑制させる触媒を開発している。しかし、この触媒は細胞傷害性が高いため、臨床での応用が可能で、かつ生体組織への透過性が高い近赤外光で作用する光触媒の開発に取り組んだ。
同研究グループは、近赤外光の照射によって結合しやすい酸素を効率的に産生し、Aβを酸素化する独自の光触媒を開発。この光触媒により、生きた細胞が存在する状況でも機能し、Aβ凝集体由来の細胞傷害性を低減させることができた。また、近赤外光を照射すると、マウスの皮下に存在するAβが酸素化した。
さらに、アルツハイマー病モデルマウスの脳内に触媒を投与し、近赤外光を照射した。その結果、触媒による処置をしていない場合に比べ、脳内のAβ凝集体の量が約半分に減少した。
これらの成果は、アルツハイマー病に加え、糖尿病のようにタンパク質の凝集が原因となるさまざまな末梢系の疾患にも、触媒反応による治療法を応用できる可能性を示している。今後は、マウス体内でのAβ凝集体の酸素化が、アルツハイマー病特有の症状を改善するかなどを検討していく。同時に、医薬品に適合した形への改良を進めるという。
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