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「標準時間」とは何か?(後編)よくわかる「標準時間」のはなし(5)(1/3 ページ)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。標準時間を設定する際の特に重要な2つのポイントとなるのが「標準の早さ」と「余裕時間」だ。第4回の「標準の早さ」に続き、第5回は「余裕時間」について説明する。

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 標準時間(ST:Standard Time)について話を進めていますが、標準時間を設定する際に特に重要なポイントとして、「標準の早さ」と「余裕時間」があります。このうち、前回の中編では「標準の早さ」について説明しましたが、今回は「余裕時間」について説明したいと思います。前編で、「余裕時間」について次のように概略の説明をしましたが、概念としてまずはご理解ください。

 1日の作業時間の中には、作業目的を遂行していく上で、必要な作業時間の他に、現状の作業方法ではどうしても避けることのできないいろいろな必要不可欠な時間の存在があります。例えば、人として避け得ない休憩時間であるとか、旋盤作業では摩耗したバイトの交換などの付帯作業が必ず発生します。また、作業を行う際に図面上の不明な点を上司へ確認するとか、朝礼に参加するなどの時間もあります。このような直接作業として割り当てることのできない時間を「標準時間」の中に「余裕時間」として考慮しておかなければなりません。

 このように「余裕時間」は、作業の遂行において、作業者自身では避けることのできない不規則に発生する“遅れの時間”をいいます。「余裕時間」には「作業余裕」「職場余裕」「個人余裕」「疲労余裕」があります。この概要を念頭に置きながら、今回はさらに詳しく説明させて頂きます。

⇒本連載の目次はこちら

1.余裕時間とは

 「標準時間」は、「作業時間」と「余裕時間」で構成されていることは先にも述べた通りですが、このうち、「作業時間」は、標準の作業速度を前提とした1サイクルの仕事を行う際に必要な作業そのものの時間です。

 1つの部品や製品は、作業時間のみで加工することができません。製品1個ごとの加工には必要ではなくても、例えば、刃物の研磨などのように不規則に発生する回避不可能な必要な時間があります。これを「余裕時間」と呼んでいます。1日の作業時間を分類してみると、以下のような2種類の時間が存在します。

  • 製品1個の加工(または組み立て)を行う際に必ず必要な作業……(ア)
  • 製品を加工中、何おきとか、または不規則に必要な作業……(イ)

 上記の(イ)には、避けられるものと、避け得ないものとが存在します。例えば、作業中の工具破損や、工具が摩耗したことにより工具室へ行って新品の工具と交換してくるとか、用足しなど生理的な動作のように避けられないものと、ホイストの空くのを待っているとか、作業指示待ちのように工場管理水準の向上によって、ある程度は避け得る要素の含まれている作業があります。

 余裕時間を算定する際の基本原則は、仕事を遂行する上で必要な要素だけを取り出すことで、避けることができない遅れの時間だけにします。つまり、避けられる遅れは余裕時間の中には含めないということです。

 いずれにしても、これらの作業は不規則に発生しますので、作業単位ごとに明確な時間値として算定することが難しいという側面があります。従って、これらの時間値については、標準時間の設定技術においては、数週間から数カ月といった時間に対する平均値を「余裕(時間)」として百分率(%)で算出して「作業時間」にその割合で加算し、「標準時間」として設定するといった方法が一般的です。従って、「余裕時間」は、作業遂行上、必要な時間であって、作業上の“ゆとり時間”として与える時間ではないので、必要時間を超えて余分に与えられるものではありません。

 図1に“実働時間における標準時間”を参考までに示しておきました。

図1
図1 実働時間における標準時間(クリックで拡大)

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