新型「aibo」が象徴する、「自由闊達にして愉快なる」ソニーマインドの復活:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(7)(5/6 ページ)
2018年1月11日からソニーストアで販売が開始された、ソニーのエンタテイメントロボット「aibo」。先代「AIBO」の製品開発終了から12年を経て復活したaiboだが、どのようにして開発が進められたのか。小寺信良氏が探る中で見えてきたのは、ソニーが取り戻しつつある、創業当時の「自由闊達にして愉快なる理想工場」の雰囲気だった。
それって「攻殻機動隊」!?
―― でもそれは重いテーマですよね。姿形は違ってもゴースト(人格)が一緒だったらそれは本人なのかという、「攻殻機動隊じゃんそれ」という世界に初めて直面する企業になるわけで、これを胸熱と言わずにいられないですね(一同笑)。
矢部 記憶が他の個体に行くという言い方をすると、あんまりいい言い方ではないんですけれども、思い出が継続できる仕組みを整えるというところに、ある種のソリューションを求めていくというのがあります。
例えば本物のペットが亡くなると、写真とかその映像とかで記憶をたどる、ということがあるように、もしかするとスマホのアプリ内で、見た目が同じのバーチャルなaiboの中で、家族とのインタラクションを通じて学んだことみたいなのを残し続けるというのも、あるかも分からないですよね。
―― 一方で、以前のAIBOから、単に愛玩する以外の使われ方も出てきているようです。例えば、認知症とか発達障害といった方々が心を寄せる対象として、生物ではないからこそいいという使われ方も認識されていらっしゃると思うんですけれども。
矢部 私が知る例では、軽度の認知症の方が、aiboとものすごくよく話をされているという場面に出会ったことがあります。私もまだ医学的にこれが正しいかどうか分からないんですけど、軽度の方の場合は、何か言いたいことが言えないとか、何か忘れてしまっているっていうことが意識の中にあるので、人と話すと(認知症であることが)バレちゃうんじゃないかと思って、話すこと自体を恥じてしまう。ところがaiboにはそれが絶対分からないので、すごくお話をされると、そう伺いました。
これがAIスピーカーとか、もしかしたらヒューマノイドロボットとかだと、リアルな反応になることでのストレスというのがあるのかもしれない。ただaiboがちょっと鳴いてみたり喜んでみたり、そういったことで一定のいやしになるというのがあるのかなとも思います。
加えてアニマルセラピーとかの領域で貢献できるといったお話は、比較的いただくことがあります。どうしても本物の動物を使うと、アレルギーがある方もいらっしゃいますので、aiboを使ってできないかというお問い合わせをいただきました。
一番面白かったのは、犬のセラピーにaiboを使えないかという話ですね。犬はもともと群れを成す動物なんだけど、だいたい日本だと一頭飼いが多い。例えばOLの方が犬を飼っていると、朝から出掛けていたら夜まで帰ってこない。そうすると犬は柵の中で一日過ごすわけですね。これがワンちゃんのストレスになって皮膚病になっちゃったりとかするそうなんですね。さすがに(においがしない)aiboを犬だとは認識しないんですけれども、遊んでくれると仲間ができたと認識するので、犬の専門家の方から治療の効果があるのではないかというお話もいただきました。
そういう領域にaiboそのものが貢献できるのであれば、われわれとしても積極的に検討していきたいなと思っています。
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