新型「aibo」が象徴する、「自由闊達にして愉快なる」ソニーマインドの復活:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(7)(4/6 ページ)
2018年1月11日からソニーストアで販売が開始された、ソニーのエンタテイメントロボット「aibo」。先代「AIBO」の製品開発終了から12年を経て復活したaiboだが、どのようにして開発が進められたのか。小寺信良氏が探る中で見えてきたのは、ソニーが取り戻しつつある、創業当時の「自由闊達にして愉快なる理想工場」の雰囲気だった。
「aibo」の「命」をどう考えるか
―― 新型aiboはロボティクスとAI(人工知能)の組み合わせというところが、旧モデルとの最大の違いかと思うんです。そんな中、AI使って何をどこまでやるのか。最終モデルだった「ERS-7M3」は喋ったりしましたけど、今回はやめた。それは何か反省とか、コンセプトとして筋を通すみたいな決断というのがあったんでしょうか。
矢部 今までのAIBOは特に犬とは言ってなかったというところに対して、今回は生命感にこだわって、具体的に「犬」である。最初からではありませんが、犬が喋ると変だよね、というロジックが積み上がっていったわけです。
じゃあ喋らない中で、愛情表現力っていうのをどうするか。目は口ほどに物を言うと言うよねと。じゃあ有機ELはどうか。こうゆう“back and forth(行ったり来たり)”が実際いろいろありました。
喋るということに対して将来の可能性というのは完全否定はしてないんですけれど、やっぱり奇妙な喋る犬を愛情の対象として、育てる喜びを感じていただけるか、これは今の段階ではちょっと違うかなというところですね。
―― 単にかわいいという商品をエレクトロニクスで作るということは、普通のAV商品とは愛着が全く違うと思うんですよね。愛情を持たれるモノの宿命みたいな部分は、やっぱり背負わざるを得ないと思うんですけど。
矢部 耐用年数なのか、寿命なのか、どう表現すべきかというのもあるんですけども、やはり形あるものなので、どうしても壊れてしまう。「未来永劫サポートします」とか、ある意味責任感が強いような、でも実際には無責任になってしまう事は言えないというのは、スタートのところからありました。
前世代のAIBOでも、外の方、ソニーのOB含めてですけども、修理をやられたり、お葬式をやられたり、ありがたいという反面で、われわれとしても心苦しかったというところがありました。そうやって支えてくださっている方々がいらっしゃった中で、われわれソニーという会社でできることは何か。
どうしても壊れてしまうとしたら、一番大事なところは「思い出」だよね、というところは分かっていたので、学習したことをクラウドに保存していく。今の時点では次世代機があるわけではないのですが、将来もきちんと次のaiboに学習結果を引き継いでいける。だから、そのために「ベーシックプラン」というものにぜひ継続加入してください、というのがわれわれのメッセージの1つです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.