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新型「aibo」が象徴する、「自由闊達にして愉快なる」ソニーマインドの復活小寺信良が見た革新製品の舞台裏(7)(3/6 ページ)

2018年1月11日からソニーストアで販売が開始された、ソニーのエンタテイメントロボット「aibo」。先代「AIBO」の製品開発終了から12年を経て復活したaiboだが、どのようにして開発が進められたのか。小寺信良氏が探る中で見えてきたのは、ソニーが取り戻しつつある、創業当時の「自由闊達にして愉快なる理想工場」の雰囲気だった。

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「AIBO」と「aibo」で全く違うデザインと構造

―― 製造技術、部材、センサーなど、10年も経てばものすごく進化する中、やっぱりデザインをどこまでやるかというところがあったと思うんです。先代AIBOって割とロボットロボットしたかわいさがありました。特に最終の「ERS-7」は、その方向で完成まで行き着いたデザインだと思うんですけど、今回リスタートするにあたって、どういう方向で行こうとしたんでしょうか。

デザインとして洗練されていた「ERS-7」
デザインとして洗練されていた「ERS-7」(クリックで拡大)

矢部 コンセプトとしては、愛情の対象となる商品を作っていこうという、大きなテーマがあります。愛してもらう存在というのが、主従の関係ではなく、パートナーと言いますか対等の関係という、そこを実現してこないと、愛される存在にはなかなかなり得ない。

 そういった時にわれわれのデザイナーからの発案があったんでけど、「生命感」を持たせようと。何か生命を宿すわけではないんですけれども、命が宿っているような感覚。それがあることで、何考えてるのか分からないときに人間側がおもんばかると言いますか、そういうことができることによって、愛される存在になり得るのではないか。そういった流れで、このデザインに落ち着いて行きました。

―― 新しいaiboの造形を拝見しましたが、直線の骨組をつないで動かすのと違って、既に足のパーツ自体が曲がって設計されている状態で矛盾なく動かすというのは、相当大変だと思うんです。もはや犬の骨格は参考にならないじゃないですか(一同笑)。以前のデザインでは考えられないレベルの苦労があったと思うんですけれども。

矢部 実は今回初めてaiboのことを、「犬型」と言ってるんです。ソニーとしてはこれまで、形として「何」とは言ってこなかったので、そこが大きなところなんですね。

 結果として松井およびチームが非常に苦労したのは、この造形を動かすアクチュエーターが世の中のどこにも存在しませんと。じゃあどうするのと。でもそのためにスケジュールも遅延できないよね、というところから、「内製化だ」という流れになっていったんですね。

―― 構造的にすごいなと思うのは、肩関節と股関節の丸いところですね。内側から丸いものを丸く動かすっていうのは、すごいことだと思います。

前後股関節の構造でよりリアルに
前後股関節の構造でよりリアルに(クリックで拡大)

松井 まさにこの腰の関節が入ったところが、従来のAIBOに比べると格段に難しくなったところです。前は腰が動かなかったんで、フレームがお尻までズドッとボックス構造で取ることができたんですね。基板も両脇にドーンとあって、間にバッテリーも入ったし。

 今回は腰部分があるので、フレームが胴体の半分までしかないんですね。だから前部にボードやバッテリーを配置しなくちゃいけないところが、技術的には非常に大変でした。

―― 自律歩行するってことは、小さな段差も含めて色んなシーンを想定しなくちゃいけない。その中で重心をどこに置くかはものすごく大事だと思うんですよね。普通子犬をモデリングしたら、どうしても頭が重くなるじゃないですか。実際本物の子犬も頭が重いんですけれども。バッテリーも後ろに置けないんじゃ、全体的に前重(まえおも)になりますよね。

松井 置かざるを得ないところに配置せざるを得ない、そういった苦労がすごくありますね。既にいくつか分解の記事が上がってますけれども、本当に薄肉で、いかに強度を保ちながら軽量化するかというところを、すごく苦労して作っています。

矢部 ちなみに笑い話なんですが、「重量どのぐらい?」ってエンジニアのところに行くと、大体ざっくり2kgぐらいですと。実際は2.2kgなんですが、大体2kg強ぐらいですかねー、みたいな言い方するんですね。

 ところが会議の時とかに、「頭が3g重くなっちゃいまして…」って真剣に青くなってるんですよ。重量バランスがそれだけシビアだというのを分かってると、3g増がものすごい話になるわけですよね。でも全体はって聞くと、「全体なんか2kg強ですよ」みたいにざっくり(笑)。

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