ロボット活用拡大のボトルネック、ロボットインテグレーターの現実:産業用ロボット(2/2 ページ)
あらゆる現場で労働人口不足などが深刻化する中、その解決策としてロボット活用への期待が高まっている。しかし、現実的にはロボットを現場で実装するロボットシステムインテグレーターが不足しており、ロボット活用の裾野が広がらない状況になっている。経済産業省 関東経済産業局がまとめた「ロボットシステムインテグレーターに関する調査結果」の内容をまとめた。
人材不足対策として期待されるがSI業務そのものも人材不足
ロボットSI業務における人材については、回答企業の約9割が「不足している」と回答。さらにそのうち約8割が「ビジネスに影響がある」としており、受注の増加に対して対応が難しい状況を示している。自由回答では「画像処理開発者が不足している」「現場レベルでの制御およびティーチマンの不足」「機械設計、全体を統括できるプロジェクトリーダー」などが具体的に挙がっていた。
求めるスキルは「ロボット制御」「画像処理」など
ロボットSIビジネスにおいて、今後特に強化したいスキルについては、「ロボット制御」「画像処理」「システム制御」「機械設計」の4つが非常に高い割合を占めた。最も高かったのは「ロボット制御」だが、AI(人工知能)などソフトウェア関連技術の多岐にわたる発展がある中、制御技術も従来以上に高度化できるようになり、広範な知識が求められるようになってきている。2位となった「画像処理」などと組み合わせることで、従来使用が難しかった領域での使用も増えるとされており、こうした新たな技能を強化したいという意向が見えた結果となった。
SI業界活性化のために必要な「認知向上」と「スキル可視化」
今後ロボットシステムインテグレーター業界が活性化していくためには何が必要かという質問に対しては「業界の認知向上」が最多回答となった。ロボット導入に対してロボットを導入すればすぐに作業ができるという感覚を持つユーザー側が多く、システム構築が重要な構成要素であるということにそれほど認知が及んでいない。これが利益圧迫の要因の1つにもなっている現状がある。同様にシステム構築への価値を明確に定義するものとして「スキルの可視化」も今後必要なものとして挙げている。
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