あなたが回している「PDCA」、「CCCC」になっていませんか?:あなたのマネジメント力で組織課題を解決(3)(2/2 ページ)
コンサルタントとして仕事の進め方や組織の改革提案を行ってきた筆者が語る“マネジメント力による課題解決”。今回はマネージャーがやってしまいがちな「勘違いマネジメント」についてお話しします。
高熱になってしまっている原因(問題)の仮説設定をせずに、本来は計画が効果的に作用したかの結果としてCheckすべき指標を“タスク”に掲げ、メンバーにそれを追わせてしまっています。自身は何もプランせず、ただ「目標を追わせて確認する」のみ。けれど、自らはPDCAを回していると勘違いしてしまう。これでは問題は解決しないばかりか、メンバーのモチベーションは下がる一方です。
では、どうあるべきなのでしょうか。まず、体温が高くなっている原因を仮説立ててみることです。
「風邪をひいているかもしれない」
そこで、それを解決するためのアクションを考えます(Plan)。ここで大切なのは、山ほど羅列するのではなく、数個だけに絞り、集中して行うこと。
「風邪薬を飲もう。温かくしよう。安静にしよう」
そしてそれを実施(Do)する。翌日、体温が下がっているかをCheckします。下がっていないのならば、再度仮説を立て(「インフルエンザかもしれない」など)、それを解決するためのアクションを考える。この繰り返しです。
また、せっかく仮説を立てたのに、間違った指標をCheckしてしまうマネージャーもいます。
「ここ3カ月、売上目標を達成していない」という事象があったとしましょう。そこで、「十分な営業活動ができていない」という仮説を立て、Planの一つに「訪問件数1日3件」と立てました。ここまではOKです。
実際に日々の営業活動を行って1カ月、本来Checkすべきはもちろん「売上目標の達成度」です。しかしここで「Planどおり訪問できたか」のみに集中してCheckしてしまう。Planどおりできていないと、「なぜできなかったのか」を確認する。PとCが一緒になってしまっているのです。そうではなく、売上進ちょくを確認し、訪問件数と売上高との相関性が低いようであれば、Planからやり直す。これがPDCAです。
また、PDCAを理解していないマネージャーに限って、Checkする項目を次々と増やします。「これはやったの? あれはやったの? そっちは?」。最後に残るのは成果ではなく、ただ疲弊していくメンバーたち。これでは目標を達成しても、どの仮説とどのアクションが正しかったかの振り返りさえできません。
マネージャーは細かなところまで目が行き届いているべきだ。そんな美学を持ち、部下の行動を細かく管理するミクロマネジメントに心当たりのある方、要注意です。
自分の成功体験にすがらない! 固有の問題と向き合おう
そして細かいところを見てしまうマネージャーには、こんな傾向もあります。
例えば野球。なかなか打率の上がらない選手に対し、A監督は彼のバッティングをよく観察してこう言いました。
「三振が多いようだね。いつも一球目から振りにいっちゃうようだけど、一球目は見逃してピッチャーのクセに集中しようか」
対して、B監督。選手が構えた瞬間に
「あー、違う違う。グリップはこうして。僕も現役のときにグリップの仕方を変えてよくなったんだよ。あと膝を曲げる角度はこう」
と熱弁します。あなたが選手だったら、どちらの監督が自身の打率を上げてくれると思いますか?
私だったら、A監督。選手独自の特徴を捉え、仮説を立てて具体的なアクションを指示しています。対してB監督は、自分の成功体験だけで指示を出してしまっている。しかもレベルが細かい。よく観察して、仮説を立て、よく検討して注力するポイントを決めたら偶然、自身が若いときに取り組んだことと同じだったのであればいいんですが、そんなこと、めったに起こりません。自身が若いころに多くの実績を残した優秀な方ほど、陥りやすい罠(わな)なのかもしれません、押しつけのアクションは、選手本人にとっても苦痛です。とにかくじっくり、問題と向き合いましょう。
恐れずにPDCAを回し続ける
個人やチーム固有の問題にしっかり目を向ける。間違っていてもいいから仮説を立てる。それを解決するために注力するポイントをしっかり絞る。そしてメンバーは熱を持ってそれに取り組む。一定期間で(期間はプロジェクトによるでしょう)結果をチェックする。問題が解決されていないようであれば、また仮説を立てる。これを続けてみてください。
仮説は間違っていてもいいんです。仮説が違ったら、新しい仮説を立て直して、また取り組めばいい。それを繰り返すことで、仮説の精度も上がってくるでしょう。真摯に問題と向き合い、それをしっかりとチームで共有し、成果を評価することで、メンバーはきっとあなたのPlanを信じ、取り組んでくれるはずです。
そして、これを読んでいるあなたの上司が、“勘違いマネジメント”に陥ってしまっている場合は、ただグチを言い連ねるのではなく、しっかりと提言してチームを変えていきましょう。結局、ボールを持っているのは監督ではなく選手なのですから。
最後に、仮説に基づいて注力すべきポイントを絞って計画を立てる、というフェーズでは、論理的思考力が重要です。ぜひ、私の以前の連載「“イノベーション思考”で発想が変わる!」をご参照いただき、効果的で論理的な戦略策定に役立ててください。
筆者プロフィル
株式会社VSN VIエキスパート 桑山 和彦(くわやま かずひこ)
通信機器、情報機器メーカーより株式会社VSNに転職。VSNに入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。
2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜擢。ビジネス・ブレークスルー大学・大学院の教授である斎藤顕一氏より問題解決手法の教示を受け、いくつもの問題解決事案に携わる。
現在はVIエキスパートとして、よりハイレベルなコンサルティングサービスを提供する他、社員の育成プログラムの構築〜実施を行う。
株式会社VSN http://www.vsn.co.jp/
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