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汎用CAE「ANSYS 19」、複雑化した解析の手間や時間削減を目指すCAEニュース(3/3 ページ)

アンシス・ジャパンは同社のCAEシステム「ANSYS 19」を発表。構造解析は亀裂進展解析やトポロジー最適化などの強化、流体解析は新しいモデルの追加とターボ設計機能の強化、電磁界解析は並列処理ライセンスの改定、操作性や計算速度の向上などがトピックだ。

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電磁界解析は並列処理ライセンスの改定、操作性や計算速度の向上


アンシス・ジャパン テクニカルサポ―ト マネージャー 渡辺亨氏

 並列処理ライセンス「ANSYS HPC」には電磁界解析製品「ANSYS Electronics」も対象として加わった。さらに従来は構造と流体で個別にライセンスを契約しなければならなかったが、バージョン19からは、構造、流体、電磁界の全てが同一ライセンスで使用可能になった。電磁界解析製品には4分散分の解析が全ソルバに標準装備され、オプションで追加する必要がない。

 契約するライセンスと分散数の例は、以下の通りである。

  • HPC Packを1導入すると、8+4=12分散の解析が可能
  • HPC Packを2導入すると、32+4=36分散の解析が可能
  • HPC WG64を導入すると、64+4=68分散の解析が可能

 今回は操作性についても改善した。リボンUIを採用し、現時点の操作に関連するアイコン一覧を画面表示する。これまでより少ないクリック数で機能選択が可能になる。変数設定の文字入力の際のオートコンプリート機能も追加した。変数の頭文字を入力することで、選択可能な変数名や関数をリスト表示する。


リボンUI(出典:アンシス・ジャパン)

オートコンプリート(出典:アンシス・ジャパン)

 3次元電磁界解析ツール「ANSYS HFSS」を機能拡張した。「HFSS Transient Solver」を標準搭載し、TDR解析やESD解析が従来のソルバよりも効率よく実行可能だ。

 Directソルバにおいては、CPUの並列処理と並行してGPUも活用可能だ。これまでよりも小さなマトリクスが適用可能とした。計算スピードについては、米国本社でのベンチマークは良好ではあったものの、スピードの安定性については「期待するには正直、時期尚早である」とアンシス・ジャパン テクニカルサポ―ト マネージャー 渡辺亨氏はコメントしており、今後の改良に期待してほしいということだ。


GPUの並行活用(出典:アンシス・ジャパン)

 ソルバーオプション「HFSS SBR+」はマルチボディーRCS(Radar Cross Section:レーダ断面積)解析に対応した。HFSS SBR+は、漸近SBR+(Shooting and Bouncing Ray Plus)法を採用する、アンテナ性能解析用ソルバー。RCSに対応することで、自律走行車や検知システム開発の際に、短時間でより多くの設計条件から最適な条件を見つけることが可能であるとしている。


マルチボディーRCS解析(出典:アンシス・ジャパン)

 今回は、特に熱解析ユーザーからの要望が多かったという、拡張ガーバー「Gerber RS-274X」のインポートに対応し、3Dレイアウト環境に取り込めるようになった。


拡張ガーバーに対応(出典:アンシス・ジャパン)

 Phiメッシャーについては高速化を図っており、米国本社のベンチマーク結果によれば、特に大規模なモデルで短縮効果が大きかったとしている。

 低周波磁場解析ツール「ANSYS Maxwell」については、製造起因の電磁鋼板端部におけるコアロス補正計算に対応した。金属板の打ち抜きなどで生じる加工歪み(ひずみ)による鉄損の増加を補正する計算が可能だ。TDM(時間分割法)の計算機能についても改善し、可変タイムステップ計算や、有限長のリニア(直線)モーションの計算にも対応した。


製造起因の電磁鋼板端部におけるコアロス補正計(出典:アンシス・ジャパン)

TDMにおける計算機能の改善(出典:アンシス・ジャパン)

 SI・PI・EMI解析ソフトウェア「SI wave」においては、モデルの一部をHFSSのソルバーを用いて解析できる。SI waveとHIFFと連携して、それぞれの強みを生かし、弱点はカバーするような解析が可能だ。高速シリアルチャンネルにおけるSI(Signal Integrity:信号品質)解析においては、HIFFでは高い周波数で十分な精度を出すことができず不得手だったが、SI waveにHIFFが苦手な処理を担当させ、分担して解析することが可能になった。基板におけるビアやワイヤボンド部などの不連続部や、グランド(GND)が弱い部分の解析精度向上も期待できる。


SI waveとHIFFの連携例(出典:アンシス・ジャパン)

 「ANSYS Simplorer」については、モデリング言語「Modelica」のエディター機能を強化した。「Diagram」タブ内のシンボルが分かりやすい表示(図)になったという。リボンUIから「Simploler Shematic」タブ内の、「Add Model」アイコンから起動し、「Type」から「Modelica」を選択する。


Modelicaエディターが扱いやすくなった(出典:アンシス・ジャパン)

 「Live Data Connectors」はPTCのIoTプラットフォーム「ThingWorx」接続用のインタフェースで、SimplorerからThingWorxに容易に接続できる。PythonやC++、Javaのクライアントコードのサンプルも備える。


ThingWorx接続用インタフェース(出典:アンシス・ジャパン)

 TR(過度)解析は単一のWindows PC上の複数コア限定でマルチスレッド化でき、複数の独立した大規模サブモデルを含んだ解析の場合に時間短縮効果が得られやすいとする。利用するためにオプションライセンスは必要ない。

 他、SPICE/IBISモデル生成ソフト「ANSYS Q3D Extractor」においてはCGソルバーで使用するファセットを改善し、薄肉モデルの解析を安定化させた。「RF/SI」オプションについては、P-SPICE対応を強化した。「AEDT(ANSYS Electronics Desktop)版 Icepak」(電子機器熱流体解析ツール)のβ版では、One Way電磁界連成、スクリプト、3D Component Libraryなどに対応した。

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