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国内コネクテッドカー市場は2025年に2兆円規模に、2016年比で約5倍:車載情報機器(2/2 ページ)
矢野経済研究所は国内コネクテッドカー関連市場の調査を実施し、このほど調査内容を発表した。調査によると、2016年のコネクテッドカー関連市場の規模は3980億円で、2025年には2兆円規模に成長する見込みだという。
国内コネクテッドカー市場を16分野に整理
一方で、矢野経済研究所では、国内コネクテッドカー関連市場を算出するにあたり、市場を16分野に分類し、それぞれを定義した。それぞれの分野において、研究開発投資が発生し、成長していくと予測を示している。
- プローブ情報:車両の走行情報(位置、車速など)をセンサーなどで取得、クラウドに収集し、道路交通情報として「渋滞予測」や「EV充電情報」などに役立てる
- クラウドADAS:車両のADAS(先進運転支援システム)の情報をクラウドにアップロードし、AIなどを用いて最適な判定や操作などの情報を車両に提供し、その日の運転状況や運転手の癖などを考慮した個別の安全運転支援を行う。不特定多数の人が使用するシェアカーで役立つといわれる
- クラウドHMI:HMI(Human Machine Interface)システムなどにより取得した車内の情報(運転者のID、健康状態、塔乗者数と配置、運転経過時間など)をモニタリングした上、クラウドに収集し、運転手の健康急変や居眠り運転に備え、安全運転支援を行う
- 自動運転用クラウド:高齢者対応/過疎地対応のレベル4の自動運転には、V2X(Vehicle to Everything、車車間・路車間通信)で取得し、クラウドで収集した情報により、見通しのない交差点での車両同士の衝突防止などを実現する。盗難車両の発見、緊急自動車走行時の通行障害の軽減、異常気象時の警告などの追加機能も持つ
- コミュニティーマップ:先行車などの走行情報(位置、車速、走行中の路面情報など)やインフラストラクチャからの渋滞情報などがクラウドへ送られ、各車両に現状よりもリアルタイムに情報提供される
- ダイナミックマップ:車両のセンサー情報を元に、車両の走行情報(位置、車速、画像データなど)から周辺の3Dマップを作成し、クラウドへアップロードする。さらに、複数の車両の3Dマップから、クラウド上の地図データを更新し、より精密でリアルタイムなダイナミックマップ(HD-MAP)を作成する。自動運転で、適切に車両を制御するためには、自車位置推定と周辺環境認知のために、高精度な3次元データが必要になるためである
- テレマティクス:カーナビなどを介して、テレマティクスサービスが提供されている。運転支援分野では、カーナビの地図は、更新に際し、カーナビにインストールされた元の地図の差分データが通信を介して送られ、新しい地図に更新される。インフォテインメントサービスでは、IPラジオやストリーミング動画のダウンロード、SNSなどでは双方向のデータ通信が利用されている
- 通信機能付きカーナビ:テレマティクスサービスを利用している、通信機能付きカーナビの通信機能
- 通信機能付きディスプレイオーディオ:テレマティクスサービスを利用している、通信機能付きDA(ディスプレイオーディオ)の通信機能
- テレマティクス自動車保険:車両の走行情報や運転情報などを用いて、その車両の運転者が適切な運転をしているか、あるいは事故にならないまでも急発進や急ブレーキなどの回数が多いなどの情報を逐次取得し、運転の形態を考慮して保険料を定める自動車保険である
- OTA:現在の自動車には10年以上の使用期間があり、ソフトウェアが改善された場合には、LTE回線などを通じて、遠隔で車載プログラムの更新を行う必要がある。OTA(Over The Air、車載プログラムの遠隔更新)が可能となれば「ソフトウェアリコール対応」や「地域別での車両差別化」などが実現する
- 緊急通報システム:欧州で導入が進みつつある緊急通報システム(e-callなど)は、車両が衝突事故を起こした時に自動で緊急通報センターに連絡する仕組み。2018年以降にEU域内で発売される全ての新車に通信機能が搭載されるとみられる
- V2X構築、ブロックチェーン技術:V2Xは、自己車両と他の車両や歩行者、インフラストラクチャなどとの間で通信ネットワークを構築する仕組みである。また、ブロックチェーン技術を利用した車両の走行情報の収集・分析・情報提供機能は、将来の有力な手段として高い関心を集めている
- コネクテッドカーの通信ユニット:コネクテッドカー車両価格の増額(付加価値)分。具体的には通信ユニット(TCU、TelematicsCommunication Unit)、通信ユニットとその背後のクラウドと連携する車載コンピュータシステムが該当する
- 統合型コックピット:統合型コックピット(次世代型のe-コックピット)の特徴の1つに、コックピットシステムのプラットフォーム化が挙げられるが、同時にオープン化も進むものと考えられる
- バーチャルコックピット:運転席周辺などの車定の場所にあるコックピットを仮想の表示系に置き換えたもの。統合型コックピットとの違いは、固定した表示装置を必要としないため、車内でもドライバー席以外(助手席や後部座席)で運転操作を行ったり、遠隔で車両をコントロールすることが可能になるものと考えられる
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