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東アジアの中心で国際情報通信ハブを形成――おきなわSmart Hub構想(沖縄県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第10回。国際情報通信ハブ化に向けて取り組んでいる、沖縄県の「おきなわSmart Hub構想」を紹介する。

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イノベーションの概要

 沖縄県は2010年3月、20年後の「あるべき姿」を描いた「沖縄21世紀ビジョン」を策定し、「わが国と世界の架け橋となる強くしなやかな自立型経済の構築」を目指している。「おきなわSmart Hub構想」は、そのビジョンの実現に向けて「沖縄の情報通信関連産業が継続的な発展を遂げるため」の10年間の基本方針を示したもの。「沖縄経済の自立化に向けた情報通信関連産業の振興」と「国際情報通信ハブ化に向けた施策の展開」を掲げ、2012年度から3年間のアクションプランI、2015年度から3年間のアクションプランIIが策定された。

 アクションプランIの実績は、情報通信関連産業の企業総数は、580社の目標に対し720社(124.1%)、の、立地企業数は300社の目標に対し346社(115.3%)、ソフトウェア業1人当たりの年間売上高は、1030万円の目標に対し1263万円(122.6%)。達成できなかった情報通信関連産業の生産額、総雇用者数などもおおむね92〜95%に到達している。

 その他、クラウドコンピューティングなどの新たな高付加価値サービスの創出や、国内外のバックアップとリスク分散化を図るための「沖縄クラウドデータセンター」、「沖縄型クラウド共通基盤システム」、沖縄本島内を結ぶ広帯域ブロードバンドネットワーク「沖縄クラウドネットワーク」、通信の高コスト構造を解消するために沖縄とアジア、首都圏を直接つなぐ国際海底光ケーブルの敷設のほか、2008年度から内閣府と沖縄県が連携して整備を進めている「沖縄IT津梁パーク」には、情報通信機器検証拠点施設、アジアIT研修センター、企業集積施設3棟が作られるなど、環境整備も進んでいる。

沖縄IT津梁パーク 全体図
沖縄IT津梁パーク 全体図

 アクションプランIIでは、「情報通信関連産業の高度化・多様化を推進し、沖縄が国際的に競争力のあるアジア有数の情報通信ハブとなり、本県の自立型経済の構築に寄与することを目標」とし、「アジア有数の国際情報通信ハブの形成を実現する上で、人・企業が集積・参集する環境をどのように構成していくか」に注力し、「国際競争力を得る上で特徴的な誘引要素によって構成された施策」を検討するという方針で、「ビジネス推進施策」、「人材育成・集積施策」、「ビジネス基盤整備施策」、「ビジネス環境形成施策」、「情報通信産業振興制度活用促進施策」の5項目の施策が立案された。

 アクションプランIIもこの3月での最終年度を終え、近々これまでの成果が明らかになり、アクションプランIIIが公開されることになる。

イノベーションの地域性〜沖縄といえば……

 沖縄県といえば、やはりビーチリゾートや、独特の文化だろう。近年特に観光客が増加しており、2017年の入域観光客数は初めて900万人を超え、939万6200人(前年比9.1%増)となった。外国人観光客は前年と比較して22.1%も増加し、254万2200人。日本政府観光局が公表している2017年の訪日外国人観光客数の推計は2869万1000人なので、沖縄県だけで約9%、つまり1割近くの外国人客を集めていることになる。そのうち最多の台湾からは約79万人、韓国からは約52万人、中国からは約50万人が沖縄を訪れている。

首里城
首里城

 地図を見ると、那覇から台湾や上海は九州とほぼ同距離、マニラや韓国は大阪とほぼ同距離で、沖縄はまさに東アジアの中心。地理的優位性を生かして、琉球王国の時代から海洋交易で「アジアのハブ」としての役割を担ってきた沖縄県は、現在もまた24時間稼働する沖縄空港が「物流ハブ」となり、情報通信においてもハブとしての国際的な競争力を得ようと取り組んでいる。

ここに注目! 編集部の視点

 沖縄県が2016年に公表したアクションプランIIの資料に記載されている、県の情報通信産業の現状分析によると、強みは「近隣アジアとの連携・交流拠点となり得る地理的特性やアジアにおける高い知名度、中華圏との親和性、観光資源・文化的資源による高い人的吸引力」や、国内では「主要な大都市圏から遠隔にあり、地震が多いわが国の重要データのリスク分散拠点」となることなど。弱みは「島しょ県であり、かつ首都圏から最も離れているが故に、インフラコストの高さや市場規模の狭小性など」(以上、抜粋)としている。

 こういった分析を踏まえて環境整備や施策を進めている沖縄県だが、情報通信産業は、国内の他地域、またアジア諸国でも振興を推進しているところでもある。2012年当時、10年後の目指す姿を「広く国内外から企業・人材・知識が集積するとともに、情報通信関連産業が新たな価値創造に貢献し共に発展する『アジア有数の国際情報通信ハブ(=Smart Hub)』を形成する」と掲げてスタートしたおきなわ Smart Hub 構想。沖縄ならではの特徴を生かして、どのような国際情報通信「王国」になっていくのか、期待を持って見守りたい。

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