東洋ゴムがEVベンチャーとのエア式アクティブサス共同開発で鍛える“提案力”:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
東洋ゴム工業は、EV(電気自動車)ベンチャーのGLMとEV向けの足回りモジュール(複合部品)の共同開発に取り組むことで合意した。タイヤメーカーとして知られる東洋ゴム工業は、なぜEVベンチャーと共同開発に乗り出すのか。同社 常務執行役員 技術統括部門管掌の金井昌之氏に聞いた。
事業成長を目指すには「こういうことができる」という提案が必要
東洋ゴム工業は2017年3月に発表した中期経営計画「中計’17」において、モビリティを中心とした事業成長を目指す方針を示している。
金井氏は「自動車部品事業は、どうしても顧客から求められるがままに作るという姿勢になりがちだったが、事業成長を目指すには『こういうことができる』という提案が必要だ。しかし、何もないところか提案するのは極めて難しい。今回、自動車メーカーとしてのノウハウや知見を持つGLMと共同開発を進めることで、提案する素地を作り出せるのではないか」と強調する。
今回共同開発するエア式のアクティブサスペンションのような足回りは、自動車部品事業の中でも注力分野に挙げられている。開発目標とする2020年の段階では、GLMが開発している「GLM G4」のようなプレミアムセグメントEV向けになる可能性が高い。しかしGLMは、悪路の多い新興国向けのEVには高機能な足回りモジュールのニーズが高まると想定している。「高級車向けにとどまらないスコープをもって開発を進めていく。多くの自動車メーカーが対応に苦慮している乗り心地の向上に貢献したい」(金井氏)。
金井氏が担当する東洋ゴム工業の技術開発にとっても、今回の共同開発は大きな刺激になる。同氏は「かつては、タイヤ事業と自動車部品事業で別々に技術開発を行っていたが、現在は全社の技術開発を1つにまとめている。そういう意味で、フットワークよく、より良いモノづくりをできる組織作りは進んでいる。今回の共同開発についても、若い技術者にはいろいろと考えてもらうきっかけになるのではないかと考えている」と述べている。
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