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GLM設立秘話(前編):「和製テスラ」になれるか、京都発EVベンチャーの苦闘モノづくり×ベンチャー インタビュー(1/3 ページ)

京都発の電気自動車(EV)ベンチャー・GLM。その創業から、EVスポーツカー「トミーカイラZZ」開発の苦闘、そして「パリモーターショー2016」でのスーパーカーコンセプト「GLM G4」の発表に至るまでの秘話を前後編でお送りする。

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 2016年9月、京都のベンチャー企業・GLMが「パリモーターショー2016」で電気自動車(EV)スーパーカーのコンセプト車両「GLM G4」を公開した。同社は、2013年にEVスポーツカー「トミーカイラZZ」を発表。2015年に国内ベンチャーとして初めて、EVの量産化に成功した。

 現在、GLMの取り組みには、日本だけではなく世界各国から注目が集まっている。同社社長の小間裕康氏は、自社のビジネスモデルを通じ、日本の部品メーカーの優れた技術を世界に発信したいと語る。GLMのビジョンについて取材した。

“乗ること"を楽しむ趣味のクルマ、EVスポーツカー「トミーカイラZZ」

 12月とは思えないような暖かな日、京都のEVベンチャーであるGLMを訪問し、同社が開発販売するEVスポーツカー「トミーカイラZZ」に試乗した。

GLMが開発販売するEVスポーツカー「トミーカイラZZ」
GLMが開発販売するEVスポーツカー「トミーカイラZZ」(クリックで拡大)

 独特のバスタブ構造のシャシーを乗り越えて、シートに腰を下ろす。フルバケットシートは腰をすっぽり包み込む。もちろんシートはリクライニングしない。足元の前方が広く足をゆうゆうと伸ばせるため見た目ほどの窮屈さは感じなかった。

オリジナルのバスタブ構造シャシーシャシーをまたいで、シートに腰を下ろす オリジナルのバスタブ構造シャシー(左)。このEVプラットフォームだけで走行可能な強度剛性を併せ持つ設計になっている。シャシーをまたいで、シートに腰を下ろす(右)(クリックで拡大)

 車高が低いので、走り始めると路面の凹凸がシート越しにゴツゴツと体に伝わってくる。「中〜高速で走った時に安定するんです」という説明を聞きながら、駐車場から車道に出た。

 ドライバーがアクセルを踏んだ瞬間、思わず「うわっ!」と声がでて笑い出してしまった。まるでジェットコースターが一番高いところから一気に下るようなスピードを感じたからだ。

 スポーツカーの試乗とはいえ、周囲が工場地帯で交通量が少なく対向車もないといっても、いくら何でもスピードを出しすぎ!! と内心ヒヤヒヤした。それでもフルオープンカーで風を感じながら走るのが気持ちよかった。

 EVだからエンジン音はほとんどない。ここが高原や海辺だったら、自然の音を聞くこともできるだろう。

 周囲を軽く1周し、ガレージに戻ってから説明を聞いたところ、スピードは時速40〜45kmぐらいしか出ていなかったという。信じられない。EVは初速が速いと聞いていたが、850kgの軽い車体に305馬力のモーターを乗せるとこれだけの加速性能がでるのかとあらためて驚いた。

 トミーカイラZZの時速0〜100km加速は3.9秒。試乗では、この数字だけでは分からない“面白さ”を体験できた。

 2013年春にトミーカイラZZが発表されたとき、開発ドライバー担当の白石勇樹氏が「このクルマに一目惚れ(ぼれ)した人が、乗ったときに『おっ、こいつは面白い』と二度惚れさせたい」と語っていた意味が少し分かった気がした。

GLM社長の小間裕康氏
GLM社長の小間裕康氏

 フルオープンカーのトミーカイラZZは、雨の日も雪の日も乗れない。暑すぎる日も向いていない。荷物も積めない。トミーカイラZZは、気候のいい季節、気持ちよく晴れた休日に「今日は、車に乗ろう!」と乗ること自体を楽しむ趣味の車だ。

 GLM社長の小間氏も、「天気が良い日は、海に行ってボートで遊ぶ。それと同じような楽しみ方をするためのクルマです」という。

 2016年9月。GLMは「パリモーターショー2016」で「GLM G4」をお披露目した。パビリオンワンというメインストリートでの出展だった。

 日本のベンチャー企業が、ルノー(Renault)やフェラーリ(Ferrari)、フィアット(Fiat Automobiles)といった大手自動車メーカーと同じエリアにブースを出したことでも注目を集めた。現在、GLMには、世界中から問い合わせが殺到しているという。

「パリモーターショー2016」で「GLM G4」を発表
「パリモーターショー2016」で「GLM G4」を発表(クリックで拡大) 出典:GLM

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