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GLM設立秘話(後編):部品メーカーと思いを共有、そしてパリから世界進出モノづくり×ベンチャー インタビュー(1/3 ページ)

京都発の電気自動車(EV)ベンチャー・GLMが、EVスポーツカーとしてよみがえらせた「トミーカイラZZ」。一般公開されると予約注文が殺到したが、発売への道のりは厳しいものだった。

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小資本で品質の高い安全テストをクリア

⇒前編はこちら

 2013年4月、GLMはEV(電気自動車)スポーツカー「トミーカイラZZ」の新デザインを発表した。スタイリッシュなデザインと、EVスポーツカーという新しいコンセプトが話題になり、800万円という価格にもかかわらず、実車を見ることがないまま予約注文が殺到した。

GLM社長の小間裕康氏(左)と「トミーカイラZZ」
GLM社長の小間裕康氏(左)と「トミーカイラZZ」(2013年4月撮影)。トミーカイラZZは「グランフロント大阪」に常設展示されている(クリックで拡大)

 好調なスタートを切ったが、ベンチャー企業であるGLMにとって、発売への道のりは厳しかった。当初は2013年秋に納車予定とされていたが、さまざまな事情によりスケジュールが遅れてしまったという。

 言うまでもなくクルマは人の命を預かる製品だ。部品メーカーとしては、万が一のトラブルを懸念し、自社の部品をベンチャーに提供することに慎重な姿勢になるのは当然だろう。

 そうした不安や懸念に対して、GLM 技術本部 本部長の藤墳裕次氏を中心としたエンジニアチームは、部品メーカーに安全基準に対する考え方についてのプレゼンを繰り返した。そして、部品メーカーの担当者と一緒により高い安全基準を定め、認めてもらうことができた。

 GLM社長の小間裕康氏は「安全性を担保するのは、私たちにとっても最低限クリアすべき課題でした。非常によい課題を与えていただけたと思っています」と語る。

 しかしその高い安全基準をクリアするためのテストを何度も繰り返すうちに、コストがかさみ資金が枯渇したこともあるそうだ。

 部品メーカーに「予算オーバーしているため資金調達を待ってほしい」と打ち明けたところ、「非常に良い取り組みだし、安全の考え方にも共感している。私たちが費用を出しましょう」と申し出があったという。

 部品メーカーにとってもテストをクリアするメリットがある。例えば、あるバッテリーメーカーは、大手自動車メーカーにも同じバッテリーを提供している。トミーカイラZZに搭載している305馬力の大型モーターを動かすことができるのであれば、自社の製品に対する信頼性は上がる。

 とはいえ、そういったメリット以上に、プロジェクトに対する熱い思いを共有できていたことが申し出の一番の理由だろう。

 このようにさまざまなメーカーからの支援もあり「小資本にもかかわらず品質の高いテストがクリアできた」(小間氏)という。

車体組み付けの様子試作工場の風景 (左)車体組み付けの様子(2012年10月頃、宇治開発センターにて撮影)。(右)試作工場の風景(2013年3月頃)(クリックで拡大) 出典:GLM

Goodwoodに招致され「トミーカイラZZ」が世界デビュー

 納車の予定が伸びてしまったため、幾つもの予約がキャンセルとなった。

 小間氏は「開発にいっぱいいっぱいになってしまい、ユーザーに対するサポートができていませんでした。ケアができずにキャンセルにつながってしまったのは、とても痛い経験になっています」と述べる。

 そうした中で、英国で開催されるモータースポーツイベント「Goodwood Festival of Speed 2015」に招致された。

世界各国のレーシングカーが集結する「Goodwood Festival of Speed 2015」に参加
世界各国のレーシングカーが集結する「Goodwood Festival of Speed 2015」に参加(クリックで拡大) 出典:GLM

 同イベントは、敷地内にサーキットがある伯爵の城に、世界のエキゾチックカーが集まるフェスティバルだ。招待メーカーしか出場できない特別なイベントとしても知られる。

 日本のクルマは海外で高い評価を得ているが、それは大手メーカーが大量生産する一般的な乗用車だ。そうした中でベンチャーであるGLMが、エキゾチックなクルマを生んだということが大きな驚きで迎えられた。

 主催者からは「日本人の細やかな精神が積もったレーシングスポーツカーで、非常に面白い」と高い評価を受けたそうだ。

 これがきっかけとなり、国内外から試乗会の実施などイベントの声がかかるようになった。イベントに仮予約をしている人たちを招待し、実際に乗ってもらうこともある。試乗することで、トミーカイラZZの魅力を本当に知ってもらえるからだ。

 試乗会では、快適装備の問題や航続距離に対する要望、サーキットでのチューニングなどへの意見が出ることもある。そして、イベントが新たな受注見込みにつながったり、新たなサプライヤーとの出会いもあるという。

 2015年10月からトミーカイラZZは量産体制に入っている。とはいえハンドメイドで製造しているため、納車まで半年待ちという状況は今も続いている。

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