あなたがまだ感じていない眠気を見抜くカメラ、視線の方向は1度単位で検知:自動運転技術
オムロンは、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」において、ドライバーの視線の方向や眠気を高精度に検出する単眼赤外線カメラの技術を披露した。
オムロンは、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜12日、米国ネバダ州ラスベガス)において、ドライバーの視線の方向や眠気を高精度に検出する単眼赤外線カメラの技術を披露した。2021年の実用化を目指す。
ドライバーの状態を監視する機能は、自動運転と手動運転の切り替えが発生するレベル3までの自動運転システムでは必須となる。ドライバーが自覚していない浅い眠気や、見ているようで見ていない見落としを検知することにより、さらに安全な運転支援システムを実現していく。
眼球の微妙な動きが眠気の手がかり
ドライバーの眠気検知はこれまでにも実用化されてきたが、従来の技術では、居眠り直前のかなり眠い状態の検知が中心だった。かなり眠い状態で眠気を解消する刺激を与えても、覚醒状態まで戻すのは難しい。一方、ドライバーが自覚していない浅い眠気であれば刺激を与えることで覚醒を促しやすいが、高精度に検出するのが困難だった。
オムロンは浅い眠気の検知にあたって、前庭動眼反射(VOR、頭部の動きによって生じる視界のブレを解消するための微細な眼球の動き)に着目。無意識でも眠気を感じ始めると頭部の動きと前庭動眼反射の相関が乱れることを利用した。従来は前庭動眼反射の検知には特殊なヘッドセットが必要だったが、メーターに設置したメガピクセルカメラとオムロン独自の顔センシング技術によって、特殊な機器をドライバー自身が装着することなく検知できるようにした。
VORは人間が眠気を感じる数分前から低下するため、今回の技術によって眠気を解消しやすい段階でドライバーに刺激を与えることが可能になる。また、発生する眼球の微細な動きは反射運動の一種で、ドライバー本人がコントロールすることはできない。そのため、まぶたの動きを指標とするよりも確実に眠気の検知を行うことが可能になるとしている。
単眼カメラで顔を立体的に検知
CES 2018では、単眼の赤外線カメラでドライバーの視線の方向を1度単位の精度で検知する技術も披露した。ドライバーが見ているものを検出するには、カメラから目の位置までの奥行きと視線の角度の両方が必要になる。そのため、これまでの視線検知技術では2基の赤外線カメラを用いることが多かった。
オムロンは、FA分野で実績のある3Dセンシング技術を生かして、低コストでドライバーの顔を立体的に撮影できるようにした。この技術は、肉眼では見えない特殊で細かなパターンのマスクを照射することで、凹凸を単眼カメラでとらえるもの。ドライバーの目までの奥行きに加えて、角膜が反射している位置まで検出する。
ドライバー監視のためのカメラを2基から1基に減らせることにより、システムのコスト低減に貢献するとしている。
ドライバーの状態を把握する手段としては、脳波の測定などもある。オムロンの説明員は「脳波の動きが示す意味を検証するには、脳波以外にもドライバーの動作や脳波以外の生体情報、周辺の環境などと突き合わせて考えなければならない。脳波を測定するヘッドセットを常に装着して運転する必要もある。脳波そのものよりも、VORのように脳の反応の結果に起こる身体の反応に着目する方がドライバー理解の近道かもしれない」と説明していた。
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