デジタルヘルスと高齢化の施策で互いの将来を俯瞰するオーストラリアと日本:海外医療技術トレンド(31)(2/3 ページ)
世界各国で進んでいるデジタルヘルス推進施策だが、日本と同じアジア太平洋地域も同様だ。電子カルテ普及率が9割を超えるオーストラリアは、日本の将来を俯瞰する上で参考になる。オーストラリアにとっても、今後の課題となる高齢化施策は日本の取り組みが参考になりそうだ。
デジタルヘルスの鍵を握るオーストラリア版PHR「My Health Record」
2016年の組織創設以来、デジタルヘルス庁は、以下のような製品/サービスを提供している。
- My Health Record
- 医療IDサービス
- 全国医療認証サービス(NASH)
- セキュア・メッセージング
- 臨床用語集
- 臨床情報仕様
- サプライチェーン
これらのうち「My Health Record」は、患者本人が自らの生涯にわたる医療等の情報を経年的に把握できる仕組み、すなわち「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR:Personal Health Record)」(関連情報)のオーストラリア版で、本人の意思に基づく同意を前提とするオプトイン方式を採用している。
図3は、デジタルヘルス庁が公表した、2018年1月7日時点での「My Health Record」の登録状況である(関連情報)。オーストラリア全土で、545万7903人の消費者と1万646の医療機関が登録している。
図3 「My Health Record」の登録状況(2018年1月7日時点)(クリックで拡大) 出典:The Australian Digital Health Agency「My Health Record Statistics - at 07 January 2018」(2018年1月7日)
年齢層構成別の消費者登録状況をみると、19歳以下が36%であるのに対し、65歳以上が14%となっており、シニア層の登録率をどう上げるかが課題になっていることが分かる。また、州/地域別の登録状況をみると、オーストラリアの全人口に占める登録者比率22%に対し、最も高いのがクイーンズランド州(29%)、最も低いのがビクトリア州(17%)で、地域差が存在している。My Health RecordのようなPHRを活用したデジタルヘルス関連サービスを実現するためには、登録率が低い層を魅了してエンゲージメントを上げるイノベーションが不可欠だ。
医療機関の登録状況についてみると、一般医(かかりつけ医)が6294で最も多く、その他医療機関(医師と看護師以外の医療関連職含む)が1446、小売薬局が1439と続いている。国土が広大なオーストラリアでは、大規模病院が都市部に集中する一方、小規模の診療所や薬局が地域に点在するケースが多いので、ブロードバンド/モバイルネットワークなど、デジタルヘルス基盤の普及/維持管理状況がMy Health Recordを介した地域医療/介護連携に大きく関わってくることになる。加えて、広大なネットワーク環境下では、院外のセキュリティ/プライバシー対策をどう向上させるかも課題になる。
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