国内パワーアシストスーツ市場は2020年度に40億円へ、「真価が試される」:ロボット開発ニュース
矢野経済研究所は、国内のパワーアシストスーツ市場の調査を実施し、その結果を発表した。市場は2020年度までは拡大基調ながらその真価が試される期間になるとし、2020年度の市場規模を40億5000万円と予測する。
矢野経済研究所は2017年12月15日、国内のパワーアシストスーツ(PAS)市場の調査結果を発表した。同調査は、同年8〜11月に国内のPASメーカーや販売元企業、関連団体などを対象に実施。今後の予測では、国内市場は2020年度までは拡大基調ながら、その真価が試される期間になるとしている。
同調査におけるPASとは、動力源の有無や種類にかかわらず、人が装着することで動作や姿勢に対して何らかのアシスト(歩行や作業の支援・補助など)を行うものを指す。歩行支援を目的とする「歩行支援型」、重作業などでの身体的負担の軽減を目的とする「作業支援型」、そのどちらにも当てはまらないタイプの3つに分けられる。
2016年度の国内のPAS市場規模は、前年度比146.2%の26億7600万円(メーカー出荷金額ベース:以下同)であった。2014年度以降、新規市場参入と新製品の上市が続いており、特に近年では作業支援型が増加し、2016年度は厚生労働省の「介護ロボット等導入支援特別事業」の補助金の影響で高価格品の出荷が拡大。2017年度は補助金がなくなることで作業支援型が減少するが、歩行支援型は増加し、2017年度の国内の同市場規模は前年度比104.9%の28億600万円の微増を見込む。
PASの製品化動向では、動力源に電気モーターを採用するパワー系が主流となっている。一方で、動力源を有しない非パワー系の製品も増えており、さらに圧縮空気を利用したアシスト方式も加わって、ユーザーの選択肢が広がっている。PASの開発では、技術関連先として大学が関与している事例が大半を占め、その研究が理論や効果の根拠となっている。その関わり方は、大学発の技術の製品化を目的としたシーズ先行型と、共同研究などの形をとって製品化の過程で大学の技術支援を受けるニーズ先行型がほぼ半分ずつとなっている。
また、徐々に製品数が増える中で、期待される効果が得られるかどうかが問われようとしている。歩行支援型、作業支援型ともに狙うターゲットが似通ってきており、本格的な競合が始まると見ている。製品の汎用性を追求し、より大きな需要を求めた取り組みも始まろうとしているという。
今後の展望としては、実用品として製品評価が進む中で、競合メーカーに先行して評価を得ることがポイントとなる。用途が幅広く、潜在需要も大きい作業支援型が市場をリードしていくと見込むが、リハビリ支援を目的とした歩行支援型も一定のニーズがある。さらに、市場の創出には製品の低価格化も求められる段階だとする。
今後の国内市場規模は、2020年度までは拡大基調にあることは間違いないが、需要が本格化するわけではなく、その前段階としてユーザーによる製品評価が進む期間に位置付けられるとする。作業支援型では、新たな業務用ツールとして需要拡大が期待でき、歩行支援型も、個人向けの製品が投入されたことで、日常生活や健康維持目的の利用などでの一定の需要が見込まれる。これらにより、2020年度の国内のPAS市場規模は、40億5000万円まで成長すると予測している。
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