ロボット普及の課題となるハンド、人間の手の構造を「からくり」で再現:産業用ロボット(2/2 ページ)
NEDOとダブル技研、都立産業技術高専は人間の手の構造を模倣することで、簡単な制御でさまざまなモノを安定的につかめるロボットハンド機構を開発した。
3種類のロボットハンドを開発
今回の新技術を用いて3種類のロボットハンドを開発。可能な限り人間の手の構造や大きさを模倣した、人間型5本指のロボットハンドである「F-hand」と機械部品を一切使わずに紙だけで構成したロボットハンドの「オリガミハンド」、産業用ニーズなどを取り入れて具体的な製品として展開予定の3本指のロボットハンド「New D-hand」である。
F-hand
F-handは、全長37.5cm、全幅13.5cm、重さ705gの5本指ロボットハンドである。協調リンク機構により基本的な動作をモーター1個で実現できる。握力は2〜3kgで約1.5kgのものを持ち上げることもできるという。
デモでは、手首部分に加え、親指以外の指部分にモーターを採用した5つのモーター採用モデルなども実演。ペットボトルやリンゴ、オレンジ、シュークリーム、イチゴ、ペンなど、異なる形状のものを次々に持ち上げる様子を披露した。
オリガミハンド
「オリガミハンド」は、抽出した人の手の構造部分だけを紙だけで作れるようにしたもの。通常サイズは全長11.7cm、高さ5.2cm、幅1.5cm、重さ9.3g。1枚のシートを折り曲げてのり付けするだけで作ることができる。
使い捨てが容易なため医療・食品などの衛生分野や、軽さや構造の簡単さを生かして顕微鏡などの微小領域から宇宙や深海など極限環境などでの用途を想定しているという。
New D-hand
研究開発が中心である「F-hand」と「オリガミハンド」に対し、産業用ロボット関連で製品化と販売を想定しているのが「New D-hand」である。以前から深谷氏とダブル技研で従来モデルである「D-hand」の共同研究を行っており、2014年ごろに製品化。既に製造業の工場内などで実績があるという。新たな協調リンク機構を進化させたモデルを展開することで、用途拡大などに取り組む方針だとしている。
ダブル技研の代表取締役の和田博氏は「現在開発中のものは早くても製品化は2年後となるが、産業用レベルに耐え得るものに仕上げていく。現状ではなじみ機能により複雑な形状のものやさまざまな形状のものがつかめるという利点がある一方で精度が低いという課題がある。これを解決していく」と述べている。
また用途については「製造業の工場内ということであれば、直近で見えているのがパーツフィーダーの部品ピックアップや組み立てなどの用途だ。組み立ては精度が要求されるので、ここはさらなる研究開発が必要。その他の産業では介護や食品などでニーズがあると考えている。またサービスロボットでの活用やドローン搭載用ハンドなどのニーズも期待している」と和田氏は述べている。
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