IoTで予防歯科の啓蒙と促進を「入れ歯は確実に防げる」:医療機器ニュース(3/3 ページ)
富士通とサンスターグループ オーラルケアカンパニーはIoTスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY(ガム・プレイ)」と歯科医院向けクラウドサービスが連携する先進予防歯科サービスを販売する。富士通の歯科医院向けクラウドサービスを利用する、日本の予防歯科における第一人者、日吉歯科診療所 理事長である熊谷崇氏が、予防歯科の意義や課題について訴えた。
8020だけでは不十分
日本歯科医師会では1989年から「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020(ハチマルニイマル)運動」を推進してきた。1989年の厚生省「成人歯科保健対策検討会中間報告」には「残存歯数が約20本あれば食品の咀嚼(そしゃく)が容易であるとされており、例えば日本人の平均寿命である80歳で20本の歯を残すという、いわゆる8020運動を目標の1つとして設定するのが適切ではないかと考えられる」との記載がある。しかしながら20本は永久歯8本の抜歯を見込んだ本数である。
2011年に厚生労働省が実施した歯科疾患実態調査によれば日本国内の後期高齢者(75歳以上)の89%がブリッジや部分入れ歯、総入れ歯といった「何らかの義歯」を使用しているという。8020によって家庭での歯磨きなどのケアの啓蒙ができていても義歯になってしまう。
8020をいくら掲げ、定期的な歯石取りや歯科検診を推奨しようとも、現状の医療保険制度の下では、歯周病や虫歯など問題が発生した時だけかかりつけの歯科にかかり、家庭でのケアが中心になってしまうのが現状だ。
日本で予防歯科が普及しない一番のネックは、予防歯科を重視しない日本の健康保険制度であるとも熊谷氏は指摘する。国内では予防歯科は自由診療となり健康保険が効かず、自費負担となる。「歯周病は相当手遅れな段階にならないと保険適用できない。若い人ではまず無理」(熊谷氏)。
予防歯科にかかるには1回につき5000〜1万5000ほどかかるといわれ、安い額とはいえない。しかし熊谷氏は、予防歯科のメンテナンスを受けることが習慣化されることで、結果的には生涯における歯科医療費の抑制につながっていくと説明する。
予防歯科にできるだけ取り組みやすくしようと、日吉歯科では地域の企業と連携して歯科メンテナンスの助成金制度を推進する。歯科メンテナンス助成金制度とは、企業が福利厚生の一環として、歯科メンテナンスを受けた社員に対して助成金を支払う制度である。富士通も2016年7月からその制度を定めている。
予防歯科を積極推進する医院は日本ではそれほど数が多くなく、また診療の質にもばらつきがある。富士通が運営協力する予防歯科のコミュニティーWebサイト「コミュニケーション・ギア」では、予防歯科として必要とされる厳しい基準を満たした医院のリストが公開されている。また富士通のクラウドサービスに対応する予防型の歯科医院もコミュニケーション・ギアで確認することが可能だ。
口腔の健康を保つには、「家庭で歯磨きをするだけでは不十分。虫歯のなりやすさなど、個人の特異性を理解してケアしなければならない」と熊谷氏は言う。虫歯や歯周病などのトラブルを解消して健康な状態にした上でメンテナンスに取り組むべきだとも述べる。
「富士通と提携するクラウドサービスによってエビデンス(効果があることが示せる証拠や検証結果、臨床結果など)を作っていくことで、予防歯科によって健康寿命が延びていくことが明らかになるのではないかと考えている」(熊谷氏)。クラウドによる情報提供、ホームケアの質の向上、医師の治療の質向上、歯科衛生士によるメンテナンスの質向上に取り組むことで、日本国民の口腔と全身の健康維持につなげていきたいという。
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