医薬品医療機器等法(薬機法)の全体像を俯瞰する:医療機器開発のための薬機法解説(1)(1/3 ページ)
2014年11月に施行された医薬品医療機器等法は、従来の薬事法と比べて医療機器の開発に関わる部分で大きな改正が行われた。本連載では「薬機法」の略称で呼ばれている同法について医療機器開発の観点から解説していく。第1回では、改正前の薬事法との比較から薬機法の全体像を俯瞰する。
1)医療機器と法律
このフォーラムのタイトルにもなっている「医療機器」ですが、そもそも医療機器とは何を指すのでしょうか。
レントゲン撮影機やCTスキャン、MRI、あるいは心臓ペースメーカーなどを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうし、(視力補正用の)眼鏡、電子体温計、あるいはコンドームなどを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
それらは全て「医療機器」です。このように、多くの種類の医療機器が世の中には存在します。
しかし、この「医療機器」ですが、開発や市場への参入など、関わっていくのは非常に難しいのではないかという印象があります。その原因の1つに、「医療機器」として国に認めてもらうまでに多くの時間がかかっていた、という点があるかと思います。
実際、平成26(2014)年11月までの薬事規制下では、改善の努力は認められたものの、国に医療機器であると認めてもらうまでには多くの時間を費やす必要があり、製品として市場に投入するにはさらに多くの時間がかかるという問題がありました。
最先端の技術を、人命を救うため早急に役立てたいと考えている医療機器業界にとって、この時間の壁は大きな問題になっていました。これを「デバイスラグ」などと呼んでいますが、「デバイスラグ」は、医療機器市場を育成し、さらに多くのメーカーに参入を促していく上でも大きな障害となってきました。
このような分野「医療機器」の安全性や規制について定める法律が「昭和35年法律第145号」、以前は「薬事法」と呼ばれていた法律です。
2)薬事法と医薬品医療機器等法
薬事法は、昭和35(1960)年に施行された、歴史の長い、言い換えれば古い法律です。2000年代に入って医療機器に関する安全対策の見直しが図られ、後で説明するように、リスクに応じたクラス分類制度を導入したり、第三者認証制度を導入したりなど、ある程度「医療機器」の特性に応じた法改正も行われてきました。
「薬事」とあるように、医薬品に関する決まりごとを中心に定められ、運用されてきた法律だったわけですが、医療機器に関する問題や、「薬害」の問題、IPS細胞などで話題の再生医療への対応を盛り込んだ、大きな法改正が平成26(2014)年11月25日になされました。
その際、法律の題名も改められ、従来の「薬事法」は本連載のテーマでもある薬機法、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」へと変更されました。何となく意味がそのまま説明された名前になっていますが、あまりに長いため「医薬品医療機器等法(いやくひんいりょうききとうほう)」と略されています。そのさらに短い略称になるのが「薬機法」です。
この法律はその名の通り、「医薬品」等と「医療機器」等を別々に分ける考え方に基づいています。
その第二条第四項で、医療機器は、
人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
と定義されています。
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