「IoT-Engine」は回り始めたのか、鍵を握る実証実験の場「INIAD」:2017 TRON Symposium(2/2 ページ)
TRONプロジェクトが提唱する「アグリゲートコンピューティング」実現のための標準プラットフォーム環境である「IoT-Engine」。「2017 TRON Symposium」の展示会場では、前回に引き続き「IoT-Engineパビリオン」が設けられた。実動作するIoT-Engineのデモンストレーションが目玉だった前回と比べて、今回はどのような展示が行われたのだろうか。
「IoT-Engine」そのものではなく周辺技術をアピール
ルネサス エレクトロニクスとNuvoton Technology(ヌヴォトン)、STMicroelectronics(STマイクロ)のIoT-Engineの展示は、前回と比べてあまり変わらない内容だった。
ルネサスは「RX231」を搭載するIoT-Engineと「RX130タッチキー評価ボード」を使って、対面の展示ブースにあるヌヴォトンのIoT-Engineを組み込んだミニチュアドアの電子錠を開くデモを見せた。操作インタフェースなどが若干異なるものの、ルネサス側からヌヴォトンの電子錠を開くという意味では変わりがない。
STマイクロが行った、IoT-Engine用の評価ボードに搭載されている温度センサーと照度センサーの検知結果をノートPCに表示するデモも前回とほぼ同じである。
ただし、ルネサスとSTマイクロは、IoT-Engineと関わるであろう周辺技術も併せてアピールした。ルネサスがアピールしたのはセキュリティである。RX231は、暗号とソフトウェア改ざん検出の両面で「Root of Trust」を実現するハードウェアを組み込んでいる点が異なるという。
一方、STマイクロのアピールポイントは、IoT-Engineに搭載されている「Cortex-Mシリーズ」のプロセッサコアでも利用可能な組み込みAI(人工知能)や顔認証エンジンといった技術だ。組み込みAIは、機械学習などで得たアルゴリズムを数十KB〜数MBのメモリ容量で実装できる。TeraProbeが開発した顔認証エンジンは、「Coretx-M4」コアを使って顔検出から顔画像データバンクとの照合を0.3秒で完了するという。
このように、IoT-Engineパビリオンの出展企業を中心に、さまざまな活動がIoT-Engineで進められているが、本格的な採用はまだこれからというのが実情だ。マイコンレベルのIoTデバイスについては、まだ世界的な標準が定まっていないこともあってか、様子見の企業も多いという。
IoT-Engineが普及するには、RF IoT-Engineのような低価格の評価ボードだけでなく、実証実験の成果も必要になるだろう。坂村氏は、自身が学部長を務めるINIADを、IoT-Engineを用いたスマートビルディングの実証実験の舞台とする考えを示している。今後INIADでどのような取り組みが行われるかに注目だ。
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