TRONはIoTに加えてAIも取り込む、IEEEによる標準化でさらなる普及へ:2017 TRON Symposium(1/2 ページ)
トロンフォーラムが主催する「2017 TRON Symposium−TRONSHOW−」のテーマは「AI+オープンデータ+IoT=未来」だ。TRONプロジェクトリーダーの坂村健氏は「オープン化によって、ここ1〜2年で急速に進化を遂げたAIを取り込んでいく」と強調した。
トロンフォーラムは2016年12月8日、東京都内で「2017 TRON Symposium−TRONSHOW−」(同年12月13〜15日、東京ミッドタウン)記者発表会を開催。2017年のTRON Symposiumの見どころや、TRONプロジェクトの最新トピックスなどを発表した。
今回のTRON Symposiumのテーマは「AI+オープンデータ+IoT=未来」。これまでも、IoT(モノのインターネット)やオープンデータについては積極的に取り組んできたが、それらにAI(人工知能)が加わった。2017年4月から東洋大学情報連携学部(INIAD)の学部長を務める坂村氏は「オープン化によって、ここ1〜2年で急速にAIが進化を遂げている。かつては最先端のAIと言えばクローズなものだったが、グーグル(Google)をはじめオープン化が進んでおり、学会発表よりも早いスピードで情報が公開されている。このAIをTRONプロジェクトでも積極的に取り込んでいく」と強調する。
実際にTRONプロジェクトは、リコーとの間で「AEye Ball Sensor」と名付けた共同研究を進めている。坂村氏が所属するINIADにおいて、リコーの360度カメラをカメラではなくセンサーとして用い、これにTRONプロジェクトの組み込みAIを組み合わせて、複数のカメラ映像からリアルタイムに人の動きを細かく収集する技術の実証実験を行っている。「INIADの学生の出欠確認を自動で行える他、不審者の監視にも利用できる。TRONプロジェクトとして、組み込みの世界でAIをどう使うかを重視している。現在のAIが必要とする大量のデータを全てクラウドに送ると大変な通信量になってしまうので、いかにして効率的にデータを送るかが重要。現場側に一部AIを入れる必要もあるし、データを送る通信プロトコルなども検討すべきだろう」(坂村氏)という。
なお2017 TRON Symposiumでは、2017年12月14日10時30分から、「Vision-based IoT イメージング技術とAIを活用した 新たなオープンプラットフォーム」と題し、坂村氏とリコー Smart Vision事業本部 DS事業センター所長の浅井貴浩氏が講演を行う予定だ。
IoTエッジノードに最適なリアルタイムOSを求めたIEEE
TRONプロジェクトの最新トピックスでは、リアルタイムOS「μT-Kernel 2.0」がIEEE(米国電気電子学会)の標準に採用されたことが挙げられるだろう。2017年8月にIEEEによる標準化に向けた契約に調印し、同年12月から「IEEE P2050」としての標準化作業が始まるという。
坂村氏は「TRON系OSは組み込みリアルタイムOSの2017年調査で60%のシェアを獲得し、22年連続の利用実績トップだった。IEEEは、IoTのエッジノードに最適なリアルタイムOSの標準規格が必要になると考えており、利用実績の高いTRON系OSの1つであるμT-Kernel 2.0に白羽の矢が立った。今後、μT-Kernel 2.0はIEEE P2050として開発が進められる。もちろんTRONプロジェクトとしても、IEEEというオープンな場で最大の貢献者になっていきたいと考えている」と説明する。
2017 TRON Symposiumの2017年12月13日15時からの特別講演では、坂村氏や、IEEEのNew Standards Committeeチェアマンのステファン・デュークス(Stephan D. Dukes)氏などが参加し、「TRON×IEEE」や「IoT世界動向」について話す予定だ。
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