パナソニックの顔認証ゲートが出入国管理に採用された理由は“共創”にあり:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社とパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)が、法務省の入国管理局に採用された「顔認証ゲート」について説明。高度な顔認証技術の他に、CNS社のイノベーションセンターやデザインセンターが加わった共創活動が採用の決め手になったという。
顔認証技術だけでは採用の決め手とならず
顔認証ゲートは入札を経ての採用だったが、顔認証技術の他にユーザーフレンドリーなデザインも採用の決め手になった。まず、本人確認のために撮影を行うカメラは、ハーフミラーに内蔵しており、カメラを意識させない作りになっている。カメラはハーフミラーの中に3台組み込まれており、身長135〜195cmまで対応できる。窪田氏は「そのままカメラを見てもらったり、カメラを内蔵したディスプレイを使ったりなど、さまざまな方法を試したが、ハーフミラー方式は高齢者を中心に評価が高かった」と説明する。
また、パスポートリーダーも、さまざまな置き方に対応できるものを開発した。「読み取り面が左右逆でも読み取れるようにした。ICチップを読み取るためのアンテナ設計の面でギリギリのサイズだったが実現できた。読み取れないような置き方をする場合にも、自動検出して正しい置き方のガイドを出すようにしている」(窪田氏)という。
さらに、顔認証ゲート全体のデザインにも工夫を凝らした。カメラ内蔵ハーフミラーの横に手荷物を置くスペースを確保するともに、足元も窪んだデザインにして重い荷物をそばに置けるようにしている。
ゲートの横幅は1450mmで、指紋認証式ゲートよりもコンパクトになっている。ゲートの配置方法も検討しており、横に並べる並列型以外に、より多くの台数を設置できるフィッシュボーン型にも対応できるデザインに仕上げた。
このように、顔認証技術とユーザーフレンドリーなデザインを融合できたのは、CNS社内で技術開発を担当するイノベーションセンターと、デザインを担当するデザインセンターを活用した共創活動の成果だ。PSSJ 公共システム本部 公共営業統括部門担当 執行役員の細貝邦行氏は「イノベーションセンターでは、CNS社の技術者約600人を前線化している。そこにデザインセンターも加わった技術×デザイン連携により、顧客との共創活動を加速できている」と述べている。
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