笑う! ファブ3Dコンテスト2017、スイカ維管束大好きっ子も再来:3Dプリンタニュース(6/6 ページ)
3Dプリンタによる作品や利用アイデアを募る「ファブ3Dコンテスト 2017」の結果発表が行われた。今回用意されたテーマは「笑い」や「未来の楽器」など。小学生からプロまで幅広い応募の中から優勝に輝いたのは?
卵を割らずに落とせるか? ガチの熱い戦い
モノづくりプロとセミプロを対象とした「デザインエンジニアリング部門」のテーマは、2016年に引き続き「3Dプリントエッグドロップパッケージ」。3Dプリンタによる造形物に生卵を入れ、高い所から落として割れなければ勝ちとなる。競技は2017年11月11日にSFCにおいて開催された。
「2016年の会場は上限である13mをクリアした参加者が出たため、2017年は17mまで用意した。一見地味だが非常に盛り上がるのがエッグドロップコンテストの特徴」(審査委員長の慶應義塾大学SFC研究所員、デジネルおよびデジタルアルティザン代表取締役社長の原雄司氏)。
2017年の競技では、なんと3人が計測可能な最高である17mをクリアした。授賞式で流された動画では、建物の5階から落とす様子はかなり迫力があった。それぞれの作品は外観も落ち方もさまざまだ。落とした後も、スマートに取り出すものもあれば手間が掛かるものもあった。
3作品のうち、譜久原尚樹さんの「Reacushion(リアクッション)」はシンプルな筒形状だ。接地の際に卵の下に衝撃を吸収する空気のクッションが生まれる設計となっている。動画では怖いくらいにすとんと落ちて大きな音を響かせていた。
残りの2作品はパラシュートを持ったタイプだった。椿進一さんの「スパイダーエッグ」は、柔らかい材料で糸状の巣を作るとともに、パラシュートで落下速度を落とす設計だ。蜘蛛の巣の形状は計算して作ったという。
ガチのモノづくりのプロに交じって参加したのが大学生の魚森稜也さんだ。魚森さんの「Jellyfish」はパラシュートを姿勢制御に使い、複雑なカゴ状の構造で衝撃を吸収するタイプだ。相当な試行錯誤を重ねたという。
「ゆっくり落ちることを評価するのか、速くて割れないのがよいか。優秀賞を決めるのは非常に悩んだ」(原氏)ものの、評価基準を基に、優秀賞に選ばれたのは譜久原さんのReacushion。「紙を使ったエッグドロップコンテストはよく行われているが、このタイプは見たことがなくオリジナリティーが高い。取り出し時もシンプルで憎たらしいほど格好がいい。これほどの速度でありながら割れないということも評価した」(原氏)。椿さんと魚森さんは特別賞を受賞した。
今後は「ドローンで被災地に物資を落とすといったことも想定してもいいかもしれない。速度や目標の場所に落とせるかといった項目ごとの加点も考えられる」(原氏)とのことだ。
ブラックボックスではない3Dプリンタの成長を楽しんで
今回は全国の53のファブ施設がファブ3Dコンテストへの応募をサポートしており、ファブ施設賞も発表された。新人賞は鹿児島県のダイナミックラボ、名人賞は福岡県のファブラボ太宰府が受賞した。審査したfabcross編集部の越智岳人氏は「地域に根差したラボからさまざまな作品が生まれるのを見ることができた。家族などが立ち寄って一緒にモノづくりをしていく様子は、ファブ施設のあるべき姿だとうれしく感じた。この流れを今後も盛り上げていきたい」と語った。
今回のコンテストの最優秀賞は、審査員の投票により平野喬久くんの「スイカの維管束 Part2 スイカを育ててモデリング」に決定した。田中氏は最後に「3Dプリンタについて思うのは、『こんなに人の力を必要とするテクノロジーはない』ということ。2000年くらいから技術が成熟してブラックボックス化が進んだ。そんな中で3Dプリンタは、かつてくしゃくしゃになったカセットテープを引っ張って直したようなアナログな感じを思い起こさせる。上の世代は半導体、PC、インターネットなどの進化とともに歩んできた。3Dプリンタもいずれ、こんなに重かった、失敗していたんだよといわれる日が来るだろう。共にその成長を楽しんで歩んでもらえれば」と語った。
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