製造業のデータ活用“理想と現実”、約70%が効果に対して「まだ判断できない」:TechFactory 調査レポート
IoT(Internet of Things)活用やデジタル化が加速する製造現場において、データ活用の重要性はこれまで以上に高まっている。TechFactoryでは、日本のモノづくり現場におけるデータ収集、分析、そして活用の実態を浮き彫りにすべく「製造業におけるデータ分析の実態調査」を実施。その結果をレポートにまとめた。
製造現場におけるデータ活用/デジタル変革の実態は?
日本の製造現場における品質および生産性向上への取り組みは、既に高いレベルにあり、“乾いたぞうきん”を絞るかのような地道なカイゼン活動が日々続けられている。そうした中、ドイツの「インダストリー4.0」を背景に、IoT(Internet of Things)や製造現場のデジタル化が加速。取得したデータを分析し、そこで得られた洞察をさらなるカイゼン、新たな価値創造につなげることができるかどうかが強く求められ始めている。
既に、データ分析の結果から生産計画の最適化や製造上のボトルネックの解消、あるいはコスト削減といった、大きなカイゼン効果が生み出されたという事例も報告されている。しかし、その一方で「前々からデータを収集していたが分析までし切れていない」「集めたデータを何に生かしてよいか分からない」「そもそも分析するための人員やスキルがない」といった声も聞かれ、足踏みをしている企業も少なくない。
そこで、製造業のための製品・サービス情報サイト「TechFactory」では、日本のモノづくり現場におけるデータ収集、分析、そして活用の実態を浮き彫りにすべく、「製造業におけるデータ分析の実態調査」を実施(調査期間:2017年8月23日〜9月5日|総回答数:352件)。その結果をレポートにまとめた。以下でその概要を紹介する。
高まるデータ活用への意識、取り組みの規模感は“二極化”
まず、「現在のデータ活用の状況」について聞いたところ、49.7%が「取り組んでいる(何らかの形で実施中)」と回答。さらに、29.6%が「検討中」ということもあり、製造業を中心とした企業活動の中で“データ活用”への意識が高まっていることがうかがえる結果となった。
「データ活用に関する取り組みの規模感」については、「全社/全拠点にわたりデータ活用に取り組んでいる」が34.8%と最多。次いで「特定の部署や製造プロセスのみでデータ活用に取り組んでいる」が27.4%となり、全社規模で一気に取り組みを進めている企業と、小規模(限定的な範囲)で開始する企業の“二極化”の傾向が見て取れた。
データ活用の目的については、「品質向上/製品の故障分析」が56.7%、「生産/操業の効率化」が50.0%と多くの回答を集めた。さらに「データ活用の目的」に対する現在の達成レベルについて聞いたところ、「納得のいく結果・効果が得られている」が20.9%に対し、「まだ判断できる段階ではない」が69.3%と多くを占めており、目的達成に向けて、多くの企業が試行錯誤している段階であることが想像できる。
そして、データ活用の課題に関しては、「費用対効果が見えづらい」(50.8%)、「データ分析できる人材・スキルがない」(45.2%)と現実的な課題に回答が集中。データ活用に関するITツール/サービス導入に対する関心は高く、88.8%が「有効」だとし、回答者の多くが「データの可視化(見える化)の実現」「分析スピード」などに期待を寄せている。また、AIへの関心・期待については「品質向上」「生産効率化」「ノウハウの可視化」を実現するものとして多くの回答を集めた。
本調査の詳細レポートでは、回答者の基本属性、各設問の結果をグラフと数値で確認できる他、「現在業務で活用しているデータの種類」や「今後の投資計画」といった調査も実施。レポート後半では、「『データ活用』に関する意見・感想」として、回答者“生の声”も掲載している。詳細レポートは、以下からダウンロード(無料)していただきたい。
詳細レポートを無料ダウンロード:
「カイゼン」を中心にデータ活用が進む製造業、課題はROIと人材
会員制情報サイト「TechFactory」では、日本のモノづくり現場におけるデータ収集、分析、そして活用の実態を浮き彫りにすべく「製造業におけるデータ分析の実態調査」を実施(調査期間:2017年8月23日〜9月5日|総回答数:352件)。その結果をレポートにまとめた。
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