製造現場データを機械学習で分析する実証実験を実施、生産性向上を確認:FAニュース
日立システムズと中央電子は、組み立て製造業現場の生産性向上を目的とした、データ分析ソリューションの実証実験を実施した。機械学習を用いることで、人手では難しい細部の工程まで網羅的に分析でき、生産性向上につながることを確認した。
日立システムズと中央電子は2017年9月21日、組み立て製造現場の生産性向上を目的とした、データ分析ソリューションの実証実験について発表した。実証実験は、同年6〜7月にかけて、中央電子の山梨明野事業所で実施された。
実証実験では、統計ツールを用いて、中央電子の過去3年分の製造データから製品や工程、作業者ごとの作業実績グラフを作成。そのグラフに対し、日立システムズ独自の分析手法「生産性改善テンプレート」を用いて、作業時間や品質にばらつきがある工程や生産性低下の要因と思われる工程を絞り込んだ。それらの工程について生産性改善のための仮説を立案し、過去にベテラン作業者からの提案に基づいて実施した改善施策と照合した。
その結果、中央電子が過去に行った改善施策(32工程のうち7工程)を機械学習によって全て発見し、全体および工程別の改善効果を定量的に把握できた。さらに、ベテラン作業者も気付けなかった新たな改善ポイントを2つの工程で発見した。
今回の機械学習による分析には、統計解析やデータマイニングなどに利用可能なオープンソースソフトウェアが活用されている。日立システムズでは、これらの機械学習ツールと生産性改善テンプレートを用いたデータ分析ソリューションにより、現場実績データに基づいた客観的、網羅的な改善活動を支援する。
中央電子は、電力や温湿度監視などの環境監視装置の他、作業実績データをリアルタイムで収集できる装置の製造、販売をしている。自社工場をモデルとしてこれらの装置を活用し、製造業が直面する課題の解決に取り組んでいく。
今後両社は、今回検証した組み立て製造のセル型生産だけでなく、さまざまな生産方式において効率化の検証を進める。将来的には、より多くのデータをクラウド上に集約し、データ解析技術やAI(人工知能)技術などを活用して、製造業全般へ向けて生産性向上、品質改善を支援するサービスの提供を目指す。
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