ハイエースが50周年、採用したトヨタセーフティーセンスは「C」ではなく「P」:安全システム
トヨタ自動車は、「ハイエース(バン・ワゴン・コミューター)」「レジアスエース(バン)」に一部改良を実施して2017年12月1日に発売する。
トヨタ自動車は2017年11月22日、「ハイエース(バン・ワゴン・コミューター)」「レジアスエース(バン)」に一部改良を実施して同年12月1日に発売すると発表した。
ディーゼルエンジン車は、排気量2.8l(リットル)の直噴ターボディーゼルエンジン「1GD-FTV」と6速ATの組み合わせにより、JC08モード燃費を従来モデルから1.0〜1.6km/l改善した。「平成27年度燃費基準+15%」を達成するとともに「平成21年基準排出ガス10%低減レベル」の認定を取得し、「エコカー減税」の免税措置対象とした。
安全機能も充実させた。車両の安定性を確保するVSC(横滑り防止装置)やTRC(トラクションコントロール)、急な坂道での発進時に車両のずり落ちを一定時間抑えるヒルスタートアシストコントロールの他、盗難防止に貢献するオートアラームを全車標準装備とした。衝突回避支援パッケージは、歩行者検知機能つきの「Toyota Safety Sense P」を標準装備とした。
ハイエースは、1967年に「日本初の新分野のキャブオーバーバン」である「トヨエース」の小型モデルとして誕生、2017年で50周年を迎えた。初代モデルは乗用車的センスを備えた「新時代の商用車」として開発された。2代目以降は「商用車でありながら後ろに乗りたくなるクルマを」という考えの下、ファミリーカーとしての側面も広げてきた。
50周年を迎えるにあたって、販売店ではハイエースでアウトドアを楽しむライフスタイルを提案していく。
歩行者検知できない「C」の行く末は
これまで、Toyota Safety Senseは小型車向けを「C」、中大型車を「P」として車両タイプに合わせて使い分けてきた。Toyota Safety Sense Pは「カムリ」「クラウン」をはじめとするセダン系や「ハリアー」「ランドクルーザー」などSUV系に搭載されている。「アクア」「ヴィッツ」などコンパクトカーはToyota Safety Sense Cだ。
「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」「エスティマ」などミニバンのラインアップは歩行者検知に対応していないToyota Safety Sense Cが採用されてきたが、これらのミニバンよりもボディーサイズや車両重量が小さい「プリウス」「プリウスPHV」にはToyota Safety Sense Pを搭載している。
トヨタ自動車はToyota Safety Senseの発表当時(2015年)、センサーを搭載する位置とスペースの関係から2つの衝突回避支援パッケージを設定したと説明している(※1)。Toyota Safety Sense Pで使うミリ波レーダーは車両のエンブレムの裏側に設置するため、スペースの都合上コンパクトカーでは搭載が難しかったという。こうした理由から、Toyota Safety Sense Cはレーザーレーダーと単眼カメラが一体のセンサーユニットをフロントガラス上部の室内側に設置した。
(※1)関連記事:トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命
一方、軽自動車にも安全装備に対する需要が高まっていることから、スズキやダイハツ工業はフロントガラス上部に設置できるセンサーユニットで自動ブレーキの歩行者対応を進めてきた。
スズキは2015年5月発売の「スペーシア」からステレオカメラをセンサーとする運転支援システムを搭載し、歩行者対応の自動ブレーキを実現した。2017年1月発売の登録車「スイフト」からは、ハイビームアシスト機能の実現のためToyota Safety Sense Cと同じ構成のコンチネンタル製のハードウェアを採用。「ワゴンR」にも展開している。ダイハツ工業は2016年11月発売の「タント」以降、デンソー製の小型ステレオカメラの採用車種を広げている。
ホンダは軽自動車にもミリ波レーダーを採用しており、2017年8月発売の「N-BOX」にミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた運転支援システム「ホンダセンシング」を全タイプに標準装備とした。
日欧の自動車アセスメント(NCAP)は2016年から、歩行者対応の自動ブレーキを評価対象としている。欧州のEuro NCAPでは2018年から夜間の歩行者検知も評価項目に加わる。ミリ波レーダーを使わない軽自動車の歩行者対応自動ブレーキや、軽自動車にもミリ波レーダーを搭載できた例を見ると、Toyota Safety Sense Cは訴求力に欠ける部分もあるといえる。
トヨタ自動車は2017年末までに日本、北米、欧州のほぼ全ての乗用車にToyota Safety Senseを搭載する方針。その後にどのような方策をとるか注目だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人の命を預かるブレーキってどうなっているの?
転する人の命を預かるブレーキには、さまざまな工夫や安全対策が施されている。今回は油圧式ディスクブレーキに焦点を絞った。 - トヨタの最新クリーンディーゼルはなぜ圧縮比が15.6なのか
トヨタ自動車が2015年6月に大幅改良した「ランドクルーザープラド」に採用したクリーンディーゼルエンジン「GDエンジン」の圧縮比は15.6である。これは、マツダの「SKYACTIV-D 2.2」の14.0と比べると幾分高い値だ。その理由は「世界中のお客さまに使っていただくため」だった。 - 「プリウス」の追突事故が半減、「Toyota Safety Sense」の運転支援で
トヨタ自動車は運転支援システム「Toyota Safety Sense」を搭載する「プリウス」は非搭載車と比較して追突事故が半減したと発表した。アクセルの踏み間違いや踏み過ぎによる衝突被害を軽減する「インテリジェントクリアランスソナー」とToyota Safety Senseの両方を搭載した場合は、追突事故が非搭載車と比較して9割減少するという。 - トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命
トヨタ自動車が2015年4月から導入を始めた新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」。安価で高機能なこともあり、市場から高い評価を受けている。そこで、TSSの開発を担当したトヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景などについて聞いた。 - 新型「スイフト」の「デュアルセンサーブレーキ」、実はトリプルセンサー
スズキは、コンパクトカー「スイフト」を全面改良して発表した。先代モデルまでのスイフトらしさを残しながらデザインを刷新するとともに、プラットフォームや足回りなど車両全体で軽量化を図り、車両重量は先代モデルより120kg軽い840kgとした。 - ダイハツ「スマートアシスト」がデンソー製ステレオカメラ採用、スズキに対抗へ
ダイハツ工業が衝突回避支援システム「スマートアシスト」の改良版となる「スマートアシストIII」にステレオカメラを採用する。これまではレーザーレーダーと単眼カメラの組み合わせだった。歩行者対応の自動ブレーキが実現するなど、性能向上を図っている。