既存設備を用いた製造ラインの改良にVRとARを活用、ブリヂストンがデモを披露:Autodesk University Las Vegas 2017
オートデスクは、ユーザーイベント「Autodesk University Las Vegas 2017」の展示会場において、製造業におけるVRやARの活用事例を多数披露した。今回最も目を引いた展示の1つがブリヂストンのナッシュビル工場における取り組みだろう。
オートデスク(Autodesk)は、ユーザーイベント「Autodesk University Las Vegas 2017」(2017年11月14〜16日、米国ネバダ州ラスベガス)の展示会場において、製造業におけるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の活用事例を多数披露した。
同社は、ブランドコンセプトである「The Future of Making Things(ものづくりの未来)」をテーマに、製造業関連の先進的な取り組みに関する展示を前回のAutodesk University Las Vegasでも行っている※1)、※2)。
※1)関連記事:産業用ロボットが3Dプリンタに、オートデスクがデモを披露
※2)関連記事:設計や製造でVRを使いこなせ、オートデスクが4種の体験型デモでアピール
今回最も目を引いた展示の1つがブリヂストンのナッシュビル工場(テネシー州)における取り組みだろう。タイヤは常に新技術が導入されている一方で、稼働期間が50〜60年に達するような古い製造設備を利用している。これらの既存設備を活用しつつ、新技術に対応する製造ラインをアップグレードしていくわけだが、ここで問題になるのが古い製造設備は2Dの図面しかないことだ。
製造ラインの構築でダウンタイムをできるだけ短くするにはシミュレーションが欠かせない。しかし、新規に導入する設備に3Dデータがあっても、古い製造設備は2D図面だとシミュレーションは行えない。
そこでナッシュビル工場では、オートデスクの「ReCap」を使って古い製造設備を3Dスキャンし点群データとして取得。この点群データを3D CADツールの「Inventor」にインポートして3Dデータに変換した。この3Dデータは、製造ラインのアップグレードに必要な部品の設計に利用する他、VRやARを用いた製造ラインのデザインレビューにも適用しているという。3DデータをVRやARにリアルタイムで表示するための最適化は「3ds MAX」で行った。
VRやARの活用により、デザインレビューをインタラクティブに行えるようになり、物理的な試作を行う数も減らせたという。今後は、製造ラインにおける作業員のトレーニングにMR(複合現実)を活用していくことも検討しているという。
「デジタルツイン」で産業用ロボットを遠隔操作
ブリヂストンの展示の他にも、現実の世界とデジタルデータの世界を同期させる「デジタルツイン」のコンセプトを利用して、VRシステムで産業用ロボットを遠隔操作するデモをオートデスクが披露していた。産業用ロボットとの協働は安全面の問題もあって簡単とはいえないが、デジタルデータの世界に産業用ロボットのその周辺環境のレプリカを作って、その中でVRシステムを使って産業用ロボットを意のままに操作すれば、安全を確保しつつより正確な産業用ロボットの操作が可能になる。
高精度が求められるデジタルデータの世界の構築には、産業用ロボットの設計データや、周辺環境の3Dスキャンデータなどを用いる。展示については「Stingray」「Fusion 360」「Maya」「Revit」といったオートデスクの設計ツール・ソフトウェアを活用したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 空前絶後のVIVE登場でイェーッ!!(だけどCAVEも活躍中)――三菱重工における製造業VRと分類
三菱重工業のプロダクトデザイナー 山崎知之氏がHTC VIVEとの出会いと興奮を語る。廉価なVRを導入しつつも、従来のIPTシステムともすみ分けて、VRシステムを効果的に使い分ける。SCSKが2017年8月24日に開催した「SCSK VR Collaboration Seminar」より。 - 製造業VR、3Dデータで見るか? 点群で見るか?――産業設備設計レビューとVR
製鉄や環境プラント関連における設計・製図などに携わる産機エンジニアリングが、同社によるVRシステム開発や顧客導入事例について明かした。SCSKが2017年8月24日に開催した「SCSK VR Collaboration Seminar」より。 - ゲーム少年の熱意で生まれたHMDと、Holographicのインパクト
本連載では産業全体のVRの動向や将来展望について深堀りして解説していきます。今回は、これまでの産業VRの歴史と、今後予想される動きについて説明します。 - 3D CAD用のVRシステムは「事前変換方式」と「変換不要方式」どちらが良いのか?
本連載では産業全体のVRの動向や将来展望について深堀りして解説していきます。今回は、3D CAD用のVRシステムにおける、「事前変換方式」と「変換不要方式」について説明します。併せて、前回記事公開後の、産業VR関連の動向についても紹介します。 - 日本語入力とPCリテラシーの低さが生む、海外製VRソフトの障壁
本連載では産業全体のVRの動向や将来展望について深堀りして解説していきます。今回は、海外製の産業用VRソフトと、それを実際に日本で利用しようとする場合の課題点について説明します。 - 設計や製造でVRを使いこなせ、オートデスクが4種の体験型デモでアピール
Autodesk(オートデスク)は、ユーザーイベント「Autodesk University 2016」の展示会場で、製品設計や製造プロセスといったエンジニアリングにVR(仮想現実)を生かすための体験型デモンストレーションを実施した。