ホルムアルデヒドの発生を繰り返し検知できる小型センサーを開発:医療機器ニュース
物質・材料研究機構と産業技術総合研究所は、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを繰り返し検知し、継続的にモニタリングできる小型センサーを開発した。
物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所(AIST)は2017年10月23日、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを繰り返し検知し、継続的にモニタリングできる小型センサーを開発したと発表した。NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究員の石原伸輔氏らとAIST ナノ材料研究部門が共同で行ったもので、成果は同月16日に米化学会の学術誌「ACS Sensors」電子版で公開された。
同研究グループは、酸性または塩基性物質に応答して導電性が大きく変化する半導体型単層カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ)に注目。ホルムアルデヒド自体は中性だが、ホルムアルデヒド蒸気とヒドロキシルアミン塩酸塩が反応すると塩酸ガスが発生する。この塩酸ガスは、カーボンナノチューブから電子を奪い取って導電性を上昇させるが、清浄な空気で塩酸ガスを除くと導電性は元に戻る。この性質を利用して、ホルムアルデヒドを繰り返し検出できるセンサー材料を開発した。
このセンサー材料を利用したセンサーでは、ヒドロキシルアミン塩酸塩とカーボンナノチューブを間を空けて配置することで良好な応答が得られた。また、数mgのヒドロキシルアミン塩酸塩を用いれば、ppm濃度のホルムアルデヒドに比べて過剰となるので、ホルムアルデヒド蒸気に応答してごく微量の塩酸ガスが継続的に発生し、センサーは繰り返し利用できる。
導電性の変化を抵抗計で測定した場合、同センサーは、世界保健機関が定める基準値0.08ppmを下回る0.05ppmのホルムアルデヒドを実際の使用に近い「空気中、22℃、湿度36%」という中で検出できた。検出限界は高感度なことを示す0.016ppmだった。
このセンサー材料と電池、発光ダイオード(LED)、固定抵抗を用いて、ホルムアルデヒドを常時監視する小型装置も試作。2つのLEDのうち片方のみがセンサー材料につながっており、センサーがホルムアルデヒドにさらされると導電性が上がり輝度が増す。2つのLEDの輝度を比べることで、0.9ppmのホルムアルデヒド濃度を検知できた。
このセンサー材料は、スマートフォンなどの汎用(はんよう)電子機器へ容易に組み込めるため、センサーと情報通信技術を組み合わせることで、ホルムアルデヒドガスの発生を遠隔からリアルタイムで検知するシステムが可能になる。今後、センサー材料の高感度化を進めることで、将来的に0.08ppmにも対応できるとしている。
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