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自動車大国日本が誇る「つながるクルマ」は何が間違っているのかTU-Automotive Japan 2017レポート(2/3 ページ)

「TU-Automotive Japan 2017」で語られたメインテーマの1つが「コネクティビティとデータ活用」だ。日本の自動車メーカーは、海外勢に負けじと、インフォテインメントやテレマティクスと関わるサービスを中核とした「つながるクルマ」の開発に注力しているが、そこにはさまざまな課題があるという。

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他にない「ユーザー体験」を提供する「プラットフォーム」とは

 では「ユーザーがお金を払ってもいいと思うような価値」とは何か。それは、他にない「ユーザー体験」を提供する「プラットフォーム」だと同氏は指摘する。

 自動車関連プラットフォームとして成功をおさめている例として「WAZE」が挙げられた。WAZEとは、運転しているユーザーからのリアルタイムな投稿をもとに渋滞情報をコミュニティーで共有するカーナビアプリである。投稿はワンタップでできる。

「WAZE」の概要
「WAZE」の概要(クリックで拡大) 出典:Strategy Analytics

 同サービスはもともとイスラエルのスタートアップが開発したが、2013年6月にグーグル(Google)に11億米ドルで買収されている。WAZEは車両データを持たない。にもかかわらずスマートフォンを活用することでコミュニティーベースのV2V(Vehicle to Vehicle)プラットフォーム「Waze Traffic Platform」を構築した。さらにリアルタイムデータを活用した相乗りサービスの提供を始めた他、データを政府機関や道路管理事業者などにも提供している。また、街からセンサーデータなどを受け取り、それらをプラットフォームに反映させることで、より精度の高い渋滞情報をユーザーに提供するなど、人と街との連携(Connected Citizens)を実現している。

 「自動車メーカーの真のライバルはWAZEだ」とラクトット氏は指摘する。ユーザーはWazeから、正確な生のトラフィック情報をリアルタイムに入手できるという価値を得ている。本来自動車メーカーが最も自動車や交通関連のデータを所有しており、ユーザーの操作なしで同様の価値を提供できるはずだが、それを実現できていないからだ。

 もう1つの指摘はインフォテインメントのコモディティ化である。米国では、スマートフォンの機能を車載システムにミラーリングして利用するアップル(Apple)の「CarPlay」やグーグルの「Android Auto」を搭載したインフォテインメントは、今や消費者にとってお金を払ってでも欲しい機能になりつつある。特にCarPlayオーナーの35%は、CarPlayがあればナビや自動車メーカーが提供するサービスは必要ないとする調査結果もでている。日本では現在、そのようなコモディティ化された車載システムは普及していない。これはインフォテインメントの利用促進の妨げになる。

 コネクティビティの欠如およびインフォテインメントシステムの利用率の低さはすなわち、収集できるはずのデータを取り損ねていることを意味する。

 車両関連のデータ収集に最も積極的なのは欧州系自動車メーカーである。例えばBMWは、1年に1ペタバイト(1000テラバイト)の自動車関連データを収集し、2017年5月からはそれらのデータを販売する「CarData Platform」を提供開始した。それ以外にもカーシェアやライドシェアといったシェアリングサービスを既に展開している。シェアリングサービスが普及すれば、クルマの利用率も大幅にあがる。そしてこれらはコネクティビティにより実現しているのだ。

BMWの「CarData Platform」
BMWの「CarData Platform」(クリックで拡大) 出典:Strategy Analytics

 米国では、クルマへのコネクティビティを活用して動画を配信しようとする大きな流れがでてきており、2018年には本格展開される見込みだ。そこで収入を得るモデルを構築しようとしており、ここは通信事業者も大きく入り込んでいる領域である。

 このように海外ではコネクティビティやテレマティクスサービスを「コストセンター」と位置付け、データの活用や動画という価値を提供することでマネタイズの仕組みを構築しつつある。それに対し、日本はまだコネクティビティやクルマが収集するデータの活用方法を見いだせないままでいる。ここが、世界から大きく遅れている点だと指摘されているわけだ。

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