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勝つためのEV! ガソリン車だけの勝負じゃなくなってきたゾ!車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2017(2)(3/3 ページ)

車とバイクが大好きなモノづくりコンサルタントから見た「全日本学生フォーミュラ大会」とは。2017年も楽しくレポートします! さて第2回はどの大学が登場するでしょうか。

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No.E2 名古屋大学(フォーミュラチームFEM)

 今回の最後を飾るのは、やはり強豪チーム名古屋大学です。チームリーダーの柴山瑛輝さんにお話をお聞きしました。


チームリーダーの柴山瑛輝さん

S 今年はEVに専念されたんですよね? 結果はどうでした?

柴山さん(以下SY) はい、静的審査、動的審査ともに全てクリアしました。

S 素晴らしいですね! EVマシンを製作した過程を教えてください。

SY 2年ほど前に「EVをやりたいね」という話になったのです。でも全く経験もないのでその時は進まなかったのですが、昨年静岡理工科大学さんから「一緒にやりませんか?」とお声がかかり、5人のメンバーが一緒に活動をしました。そこでさまざまなノウハウを学び、今年は単独での参加になりました。EVは特に車検がICVにはない独特の項目があるので、静岡理工科大学さんには感謝しています。

K ICVでの輝かしい実績があるのに(2014年総合優勝、2015年にはオーストリアグラーツ工科大学との記憶に残るデッドヒートを披露)、なぜEVに絞ったのですか?(関連記事:「シンプルなマシン」がEV部門を連覇――静岡理工科大学に密着取材

SY 私たちはEV部門での優勝を目指していません。総合優勝のためにEVを選択したのです。

S おお! そういうことですか! かっこいいなぁ! 速いマシンを作るためにはEVだということですね?

SY はい、その選択に悔いはありません。

S EVの加速はすごいものね。アクセラレーションやオートクロス、エンデュランスでのコーナーの立ち上がり加速はすごいと思います。私、普段はBMWの排気量2l(リットル)のディーゼルターボに乗っていて、これも同排気量のガソリン車とは比べものにならないほどの加速をするんだ。先日、定期点検時の代車がBMWのEV、i3だったのだけど、ディーゼルターボよりはるかに加速がすごいです。まぁ、そんな走り方をしていると電池残量計がみるみる減りますが(笑)

SY 内燃機関は嫌いではないです。でも学生フォーミュラに勝つならEVだと信じています。現在トルクベクタリングシステムも開発しています。

S ゆくゆくは4モーターのインホイールなんて考えているのかな?

SY はい、もちろん視野に入れています。

K 車体はICVの流用と考えていいですか?

SY 学生フォーミュラは1年という短い活動期間でマシンを作らなくてはならないので、今年はまずICVの車体を基本にして、エンジンをモーターに変えたという形態です。

S いや、それでいいんですよ! ……おや、なんだかそのバルクヘッド直後の小さなリアカウルの形がいい感じですねぇ。

SY この中にモーターと制御部分が搭載されています。

S これはICVではあり得ないよねぇ。

K 白が基調のボディーカラーですが、これはチームカラーなんですか?

SY 車体は伝統的に白ですね。でもユニフォームは毎年色が変わります(笑)

S ありがとうございました。また来年の活躍に期待しています!


モーターとコントローラーを覆うカウル


フォーミュラチームFEMのメンバーの皆さん

S もう10年以上前ですか、EVが普及し始めたころ、エンジンは部品点数が数千点、モーターは構造が簡単だから、これからは参入障壁が低くなり小さな自動車メーカーがたくさんできるとまことしやかに論じている人がいましたが、冗談じゃない。車体、サスペンション、ステアリング回り、EVだろうがICVだろうがクルマの基本構造をしっかり作り上げるのはそうたやすいことではないんですよ。まるで遊園地の乗り物のような屋根のないEVを作って「はい、500万円」ですって言われて誰が買うんですか? って話です。BMW i3も500万円くらいですが、まだまだ街中で見ることは少ない。でもi3は走らせるとまさにBMWの「駆け抜ける歓び」を味わえるんです。EVはちゃんとしたメーカーにしか作れないと断言します。

 名古屋大学は国土交通大臣賞(安全・環境・新技術の評価が最も高いチーム)、静岡県知事賞(静的審査・エンデュランスを除く動的審査、安全、騒音、軽量化の評価が最も高いチーム)、袋井市長賞(静的審査の特典が最も高いチーム)、デザイン賞2位と静的審査では間違いなくトップの成績を収めました。動的審査でもアクセラレーションの3位(1位は中国上海の同済大学EV、2位は同じく同済大学のICV)、燃費で2位、オートクロス15位、エンデュランス16位など好成績を収め、EV総合優秀賞(1位)、総合順位で4位と、見事な成績を収めました。

 柴山リーダーの「勝つためのEVなんだ」という力強い言葉が印象に残ったインタビューでした。



 さて、次回最終回は準優勝、そして優勝チームのピットレポートです。お楽しみに!

筆者紹介

関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表

 専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなどの大規模アセンブリを完全一人完結組み立てを行い、品質/生産性/作業者のモチベーション向上を実現した。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、実務改善に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。

 現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部大学院客員教授として教鞭をにぎる。



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