ウェディングケーキとクラウドERPのおいしい関係、一番上のトッピングはAI:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
業界特化でERPを展開する「マイクロバーティカル」を特徴とするインフォアは、クラウドERPの「Infor CloudSuite」にAIプラットフォーム「Coleman」を追加した。Coleman投入の狙いなどについて、インフォアで研究開発部門の最高責任者を務めるソマ・ソマスンダラム氏と、インフォアジャパン社長の三浦信哉氏に話を聞いた。
AI「Coleman」は自動化のためのプラットフォーム
そして新たに加わった階層となるAIのColemanは自動化のためのプラットフォームになる。Colemanという名称は、映画「ドリーム(原題:Hidden Figures)」で知られる、NASAの宇宙開発計画に大きく貢献したアフリカ系女性エンジニアのキャサリン・コールマン・ジョンソン氏に由来している。
ソマスンダラム氏は「全ての物事は、人はできるだけ介在しない方がうまく回ることが多い。機械学習を活用すれば、そのための自動化が可能になる。例えば、機械が故障した時に、そのための補修パーツを3Dプリンタで用意したり、エンジニアを派遣したりといった、ベストな対応はAIで自動化できる」と語る。
Colemanは「対話(Conversational UX)」「増強(Augments)」「自動化(Automates)」「アドバイス(Advices)」という4つの機能がある。
「対話」の機能では、AWSの音声認識アシスタント「Alexa」のベースにもなっている「Lex」を活用している。これにより、デバイスと音声でやりとりするだけで、サプライヤーへの発注、発注書の自動作成といったことを行える。「増強」は、在庫情報や過去履歴などに基づいて、何をすべきか自動で知らせてユーザーの仕事を“増強”する機能になる。「自動化」は、先述した、機械が故障したと時に3Dプリンタから補修パーツを出力するという流れを自動で行ってくれる機能だ。「アドバイス」は、営業担当者が自身の顧客とコミュニケーションするときのレコメンド機能のようなもので「人のサブ脳として働く」(ソマスンダラム氏)という。
Colemanの開発に貢献しているのが、マサチューセッツ工科大学のインキュベーションセンターにいる100人ほど技術者だ。インフォアのマイクロバーティカルに沿って、業界特化で課題解決が可能になる機械学習のアルゴリズム開発などを行っている。ソマスンダラム氏は「AIの基盤技術は、オープンソースのクラスタコンピューティングフレームワーク『Apache Spark』だ。これをAWS上で動作させている。ただし1つの技術に頼るのではなく、適切なものを使っていくことが重要だ」と語る。
保守的な国内製造業もクラウドERPの検討へ
このようにクラウドやAIに注力しているインフォアだが、国内の製造業はクラウドの活用に前向きではないといわれる。この状況に対してソマスンダラム氏は「世界は常に動き続けており、クラウドやAIのような最新技術の動向はキャッチアップすべきだ。かつて、米国のビデオレンタル大手であるブロックバスター(Blockbuster)は、ネットフリックス(Netflix)を5000万米ドルで買収するチャンスがあったがそれを逃した。現在ネットフリックスの時価総額は、その1000倍の500億米ドルにもなっている」と訴える。
三浦氏は「確かに国内の製造業は保守的かもしれない。しかし、5〜10年前に比べればビジネス変化のスピードは段違いに早くなっており、このままでは世界で戦えないと考える企業も増えている。クラウドERPを検討する企業数で言えば、かつては顧客が1000社あればそのうち1社だけだったが、今は50社まで増えた。50倍になったということだ」と述べている。
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