世界最小クラスの長距離ミリ波レーダー、従来比50%以上の小型化で2020年に量産:自動運転技術
日立オートモティブシステムズは、車両走行中に遠距離の障害物を検知する、遠距離レーダーとして世界最小クラスの77GHz前方ロングレンジミリ波レーダーを開発した。従来の試作品では対応していなかった上下方向の検知が可能になった。
日立オートモティブシステムズは2017年10月3日、車両走行中に遠距離の障害物を検知する、遠距離レーダーとして世界最小クラスの77GHz前方ロングレンジミリ波レーダーを開発したと発表した。開発品は、2015年に発表した試作品と比較して50%以上の小型化を実現したことに加え、従来の試作品では対応していなかった上下方向の検知を可能にした。同社では自動運転の普及に貢献する技術として、2020年の製品化を予定している。
自動運転を高信頼に実現するための基盤技術として、車両周囲の障害物をリアルタイムに検出する高度な外界センシング技術が不可欠だ。高速道路など走行速度が高い場所では、その速度に対応して遠距離まで検知できるセンサーに求められる。
日立オートモティブシステムズでは、このニーズに対応するために、遠距離の障害物を検知する77GHzの周波数帯を用いた前方ロングレンジミリ波レーダーを2015年に試作開発した。この試作品は、アンテナをホーン型の形状にして誘電体レンズと組み合わせることで、電磁波の減衰を抑えて空間に放射することを可能にしている。これにより、遠距離においても効率よくミリ波の送受信ができ、車両から前方200m、左右18度の検知性能を確保した。
この試作品のさらなる改良課題として、さまざまな車両への搭載性を向上させるために、レーダーのさらなる薄型化と小型化が望まれた。また、遠くの陸橋や歩道橋、路上の落下物などを識別するために、遠距離における上下方向の検知性能が必要だった。
今回、新たに同社が開発した77GHz前方ロングレンジミリ波レーダーは、ホーン形アンテナの誘電体レンズを分割したアンテナの形状を最適化したことにより、電磁波の放射効率を維持したままアンテナの奥行き幅を低減した。これにより、以前の試作品と比較して奥行きを約30%、高さを約15%、横幅を約25%低減、体積比では50%以上の小型化を実現でき、車両への搭載性が向上した。
また、受信アンテナ数を2つから4つへと増やし、アンテナを左右方向に加えて上下方向にも配置することで、車両から前方200mの検知性能を担保したまま、上下方向4度範囲の角度検知を可能にしている。
今回発表したミリ波レーダーは「第45回東京モーターショー 2017」(プレスデー:10月25〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日)で展示する。
関連記事
- 車載準ミリ波レーダーは欧州製から日本製へ、新型「カムリ」や「CX-5」が採用
デンソーが新たに開発した24GHz帯準ミリ波レーダーが、トヨタ自動車の新型「カムリ」に採用された。マツダの新型「CX-5」も古川AS製の24GHz帯準ミリ波レーダーを採用している。従来は欧州製が多かった市場だが、国内サプライヤーが相次いで参入している。 - ミリ波レーダーのさらなる低コスト化へ、CMOSプロセスの採用が活発に
日本テキサス・インスツルメンツは、76〜81GHz帯に向けたミリ波レーダー用ワンチップCMOS製品の新しいポートフォリオを発表した。車載、ファクトリーオートメーション、医療など幅広い市場に提案する。現在量産されているミリ波レーダー向けソリューションと比較して、最大3倍の精度のセンシング機能を実現するとしている。 - ミリ波レーダーで自動運転用の高精度地図を更新、ボッシュとTomTom
Robert Bosch(ボッシュ)とオランダの地図会社TomTomは、ミリ波レーダーを使った高精度地図の開発に成功した。ミリ波レーダーのデータを高精度地図の作成に使用するのは「世界初」(ボッシュ)となる。 - ミリ波レーダー対応の自動車エンブレムに新しい成膜技術、製造コストを半減
JCUと島津製作所、きもとの3社は、ミリ波レーダーを搭載する自動車のエンブレム向けに、コストを半減する電磁波透過膜の成膜技術を開発した。 - グーグルの自動運転車も採用か、NXPがCMOSベースの77GHzミリ波レーダーICを発表
NXPセミコンダクターズは、自動車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術のセンサーとして用いられている77GHz帯ミリ波レーダー向けに、シリコンCMOSプロセスで製造したトランシーバを開発した。現行のSiGeプロセスを用いるトランシーバと比べて、77GHz帯ミリ波レーダーのさらなる小型化と低価格が可能になる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.