現場志向のIoT基盤「FIELD system」が運用開始、稼働監視などを年間100万円で:CEATEC2017(2/2 ページ)
ファナックとシスコシステムズ、ロックウェル オートメーション ジャパン、Preferred Networks、NTTグループ3社は、2016年4月に開発に着手した製造現場向けのIoTプラットフォーム「FIELD system」の国内サービスを開始した。
稼働監視や予防保全のアプリを展開、30台で年間100万円から
今回「FIELD system」の運用開始を行ったのは国内のみである。海外展開は2018年4月以降を予定している。
アプリケーションとしては、製造機器データの統合的な見える化や分析ができる「iPMA」、製造機器の予防保全を実現する「iZDT」、工作機械の加工時間を高精度に予測する「加工時間予測」、製造現場の利用者の操作権限や操作履歴を管理する「個人認証・履歴管理」の4つを用意する。いずれも「FIELD systemアプリケーションストア」からネットワーク経由で購入できるという。
「iPMA」と「iZDT」については「30台の接続を想定し年間で100万円を想定している」(ファナック 取締役専務執行役員 研究統括本部長 FIELD推進本部長 兼 IT本部長の松原俊介氏)。「加工時間予測」と「個人認証・履歴管理」の2つのアプリについては「まだ価格は決まっていない」(松原氏)という。
この他、「FIELD system」との連携を容易に実現する産業用PC「FIELD BASE PRO」など、各種コンバーターを用意。OPC UA対応のコンバーターなども用意する。
コールセンターなどサポート体制も整備
新しい提案となるために、顧客に対するサポート体制も整備。新たに「FIELD systemサポートコールセンタ」を開設。問い合わせや不具合情報の受付窓口を一本化し、事象を切り分けた上でファナックを含む関係各社にサポートを依頼できる体制を築いた。
アプリケーションについては「近々にサードパーティーからのアプリケーションはリリースできる」(稲葉氏)とし、徐々に増えてくる見込み。また2018年3月末までにPFNなどが中心となって開発する深層学習機能対応アプリをリリースする。PFNの社長兼CEOの西川徹氏は「2018年3月末までには3つか4つのアプリケーションを出す予定。その中では既に公開しているばら積みピッキングなどのアプリケーション(※3)も含む予定だ」と述べている。ハードウェアとしてはGPUが必要なものについてはシスコのコンピューティング基盤「UCS」でGPU付を選択することで対応可能だとしている。「アプリケーションによってはGPUが必要のない深層学習なども存在する。そこはアプリケーションに必要なハードウェアをその都度選択する形になる」と西川氏は語る。
(※3)関連記事:人工知能は製造現場でどう役に立つのか
今後の目標について、稲葉氏は「本当は2018年には100以上、5年後には2000〜3000の導入を目指したいと思うが、実際にはそんなに簡単ではないことは分かっている。何でもできるということはアプリ開発が必要になるということで、ある程度の領域をカバーするには数年はかかる。ただ、自動車産業などからの関心は非常に高いので、応えられるように取り組んでいく」と述べている。
関連キーワード
ファナック | IoT | Cisco Systems(シスコシステムズ) | Preferred Networks | CEATEC | ディープラーニング | NTTコミュニケーションズ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
ファナックやシスコシステムズら4社は、製造現場向けのIoTプラットフォームとして「FIELD system」を開発し、2016年度中にリリースすることを発表した。競合メーカーの製品なども接続可能なオープンな基盤とする方針。製造業IoTでは各種団体が取り組むが、ファナックでは既に製造現場に350万台以上の機器を出荷している強みを生かし「現場発」の価値を訴求する。 - ファナックがIoT基盤の壮大な実演、JIMTOFで80社250台の工作機械を見える化
ファナックは「JIMTOF2016」において、同社が展開する工場用IoT基盤「FIELD system」の壮大な実演を行った。同システムによりJIMTOFに出展した機械メーカー80社、250台の工作機械をつなぎ、稼働状況の見える化を実現した。 - ファナックのスマート工場パートナーに200社以上が参加、デファクト形成へ加速
ファナックは、同社が推進する製造現場向けのIoTプラットフォーム「FIELD system」のパートナーイベントを初開催し同システムのAPIを公開した。パートナーとしては200社以上が加わり、自律するスマート工場実現への取り組みを加速させる。 - ついに三菱電機がオープン化へ、スマート工場実現に導くエッジ基盤提供
三菱電機は製造業のスマート化に向けた新たなエッジ領域の「FA-ITオープンプラットフォーム」を提案する。生産現場とITシステムを簡単につなぐ基盤を提供することで、従来構築が難しかったスマート工場実現を支援する。 - 第4次産業革命の真の幕開けとなる2017年、カギを握るIoTプラットフォーム
2016年は製造業におけるIoT活用が具体的なものとして進展した1年となったが、2017年もその流れはとどまることはない。実導入や実活用に向けた本格的な動きが広がる中で2016年に注目を集めたのが、IoTを活用する基盤「IoTプラットフォーム」である。さまざまな解釈、さまざまなレイヤーのIoTプラットフォームが乱立する中、2017年はIoT基盤の整理が進む1年となる。 - 産業用IoTプラットフォームは4タイプに分類可能、矢野経済研究所が調査
矢野経済研究所は、製造業などがIoT(モノのインターネット)活用に向けて利用を検討している“IoTプラットフォーム”ベンダーへの調査を行った。その結果から「産業用IoTプラットフォームはおおむね4つのタイプに分類できる」と報告している。 - 第4次産業革命を支えるIoTプラットフォームって結局何なの?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第10回となる今回は、2016年から雨後のタケノコのように乱立する「IoTプラットフォーム」について説明したいと思います。